日銀・黒田総裁会見1月18日(全文1)現在の金融緩和を修正する必要はまったくない
上振れリスクと下振れリスクがおおむね見合っている
次に物価について、リスクがおおむね上下にバランスしているというふうに修正いたしましたのは、先ほど申し上げたように物価の先行きについて中心的な見通しでは、需給ギャップの改善が続く下で企業の価格設定スタンスは徐々に積極化し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むというふうに考えているわけでありまして、こうした見通しについて、前回の展望レポートまでは感染症や海外経済に起因する経済の下振れが物価に波及するリスクに加えまして、物価が上がりにくいことを前提とした企業慣行や考え方が根強く残る下で、需給ギャップの改善や原材料コストの上昇との対比で物価の上昇ペースが鈍くなる、下振れ方向のリスクをより強く意識する見方が大勢だったわけですが、もっとも今回はこうした下振れリスクだけでなく、最近の企業物価の上昇、あるいは短観における企業のインフレ予想の高まりなどを踏まえますと、上振れ方向のリスクも同時に意識する必要があるということであります。そういう意味でリスクは上振れリスクと下振れリスクがおおむね見合っているということで、上下にバランスしているというふうに述べてるわけであります。 ただ、先ほど来申し上げているとおり、その中心的な見通しは、見通し期間の最終時点でも1%程度にとどまるということでありますので、そういった点は十分考慮しつつ、金利政策について、先ほど来申し上げたとおり、現在の金融の大幅な緩和というものを粘り強く続けていくということを今回も確認したということであります。
物価がさらに上昇する可能性をどう考えているのか
読売新聞:すいません、読売新聞の【セキネ 00:20:24】と申します。2点お願いします。1点物価で、1点金融緩和のことについて伺います。足元、オミクロン株の感染拡大が急速に進んでおりますけれども、供給制約が再び起きる懸念も持たれています。そうした中で今後物価がさらに上昇していく可能性についてどのように考えられているか、単月で2%に近づく可能性というのを総裁自身どのように考えていらっしゃいますでしょうか。 一方で、2%の物価が達成する可能性がある中で、賃金の上昇は、緩やかに上昇してるとはいえ、物価上昇には追い付いていないペースだと思うのですが、そうした中で強力な金融緩和を続ければさらなるインフレを招く可能性もあると思いますが、その辺、緩和の調整というのをどのように考えていらっしゃるか、お聞かせください。 黒田:まずオミクロン株の状況、動向については、海外の動向も踏まえつつ、わが国の状況を注意深く見ていく必要があるというふうに思っております。 ただ、この感染症の影響っていうのは2つの方向でありうるわけで、一方で対面型サービスを中心に消費が下押しされるという影響と、他方で仮にさまざまな公衆衛生措置を通じて生産に、あるいは供給に制約が仮に加わっていくということになれば、これは供給を減らすということになりうるわけで、両方に需要を減らす要因と供給を減らす要因とありますので、このオミクロン株の動向を十分注視はしますが、何かこれによって非常に物価が上昇して2%に近づくというような可能性は極めて薄いというふうに思っております。 物価につきましては先ほど来申し上げているとおり、上下にバランスした、リスクがバランスしているというふうに見ておりますし、その中心の動きというのは先ほど来申し上げているとおり、2022年度に入って1%程度になり、2023年度でも1%程度ということでありますので、リスクが上下にバランスしてるとはいえ、直ちに2%に近づくというような状況は考えにくいと思っております。