日銀・黒田総裁会見1月18日(全文1)現在の金融緩和を修正する必要はまったくない
政策金利は現在の水準、またはそれを下回ると想定
その上でリスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に当面は下振れリスクのほうが大きいですが、その後は、リスクはおおむね上下にバランスしているとみています。物価の見通しについては、リスクはおおむね上下にバランスしているとみています。 日本銀行は2%の物価安定の目標の実現を目指し、これを安定的に持続するために必要な時点まで長短金利操作付き量的・質的金融緩和を継続します。マネタリーベースについては生鮮食品を除く消費者物価指数の前年比上昇率の実績値が安定的に2%を超えるまで拡大方針を継続します。また、引き続き新型コロナ対応資金繰り支援特別プログラム、国債買い入れやドルオペなどによる円貨および外貨の上限を設けない潤沢な供給、それぞれ約12兆円および約1800億円の年間増加ペースの上限の下でのETFおよびJ-REITの買い入れにより、企業等の資金繰り支援と金融市場の安定維持に努めています。その上で当面、感染症の影響を注視し、必要があればちゅうちょなく追加的な金融緩和措置を講じます。政策金利については現在の長短金利の水準、またはそれを下回る水準で推移することを想定しています。以上です。
世界経済のリスク要因をどう見ているのか
毎日新聞:ありがとうございます。続いて幹事社から2問お伺いします。まず年初でもあり、今年の世界経済の展望についてお伺いします。世界経済は回復基調にある下でインフレの高まりも見られており、海外の主要中銀は昨年末から金融政策の正常化の方向にかじを切っていますが、その世界経済に与える影響や先行きの世界経済のリスク要因などについてどのようにご覧になっていますか、お聞かせください。 2点目として、物価上昇についてお伺いします。日本でも物価の上昇圧力が高まっていますが、要因としては資源高ですとか円安によるコストプッシュの面が大きいかと思います。日銀が期待する好循環による物価上昇とは異なる形になっていますが、こうした物価上昇の持続性についてどのようにお考えかお聞かせください。また、こうした環境下で、金融政策運営で配慮すべき点についてお考えをお聞かせください。よろしくお願いします。 黒田:先ほど申し上げたように世界経済は国、地域ごとのばらつきを伴いつつも、感染症の影響が徐々に和らいでいく下で、先進国を中心とした積極的なマクロ経済政策にも支えられて、高めの成長を続けると予想しています。当面は物流の停滞や労働力不足といった供給制約が米国を中心とした先進国の経済活動の重石として作用するほか、インフレ率の押し上げ要因となるが、そうした供給制約は次第に和らいでいくと考えています。 ただし、こうした見通しをめぐっては不確実性が大きいと思います。具体的には第一に先進国の供給制約が想定以上に長期化、拡大する場合には、世界経済の成長率が下振れする可能性があります。第二に一部先進国で見られるインフレ率の高まりに対しては、各国中銀が金融政策により適切に対応すると考えていますが、国際金融市場への波及などを通じてグローバルな金融環境が想定以上に引き締まる場合には、新興国を中心に世界経済が下振れするリスクがあります。第三に中国経済についても中長期的な成長力の低下が徐々に進む下で、不動産セクターの調整の影響などにより減速感が一段と強まる恐れがあります。 以上のような下方リスクの一方で各国の家計部門における、いわゆる強制貯蓄の取り崩しが急速に進むことなどを通じて、海外経済が消費活動を中心に上振れる可能性もあると思います。日本銀行としてはこれらのリスクを含め、先行きの世界経済の動向を注意深く見ていく所存であります。 次に物価のことですが、先ほど申し上げたとおり消費者物価の前年比はすでに小幅のプラスとなっており、先行きは今回の展望レポートでお示ししたとおり見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続くと予想しております。