”シブコ”に何が必要か…渋野日向子が51位タイと崩れた米メジャー挑戦で見せた光と影の正体
「いままでの自分の癖が減ったことで、思った通りのラインや距離で打てている感触があります。3パットがない状況で3日間を終えられているのは個人的にもすごく嬉しいし、安心してパーパットを打てる距離にあることが、いままでと違うと思っています」 パットへの不安が和らいだことでアイアンショットにも迷いがなくなり、必然的にパーオン率も上がる好循環が生まれた。 心技体のすべてが噛み合えば、メジャーの舞台でも60台を出せる手応えをつかんだ。 しかし、クロスハンドグリップの実戦経験が極端に少ないがゆえに、一度でもリズムが乱れれば技術面だけでなくメンタル面の修正までもが利かなくなる。ティーショットを含めたすべてに及んだ悪影響が、大きな波を描いた4日間のスコアに反映されていた。 21位タイから発進する最終日。 渋野は「今日(3日目)の5アンダーを無駄にしないように、それでも楽しく、伸び伸びとできたら」と大きな手応えとともに、この日を迎えていた。 しかし、前半はアイアンショットがぶれ、目標にすえるパーオンがわずか3回にとどまった。 何とか耐えてパーをセーブし続けたなかで、ようやくバーディーチャンスにつけた8番と9番のパットを立て続けに外し、1バーディー、1ボギーのイーブンで後半へ入った。 迎えた10番で今大会で初めて3パットのボギーを叩き、さらに悪くなった流れはアプローチをバンカーに入れ、ダブルボギーとした13番へつながる。14番ショートでも1オンしながら再び3パット。最終18番でも1メートルのバーディーパットを外して思わず左手で顔を覆った。
パット数が33と4日目で初めて30回を超え、前日と比べると実に8も増えていた。日本ではなかなか経験できないバミューダ芝の粘り強いラフと硬くて速いグリーンは、集中力を欠いた挑戦者へ容赦なく牙をむいたのである。 浮き沈みしたメンタルに加え、課題として取り組んできたアプローチ技術も、まだ未完成。ただでさえ厳しいコース設定が、メジャーでさらにタフさを増したなかで、臨機応変に対応していくための経験値を、渋野は自身の引き出しのなかに十分にもちあわせていなかった。海外初挑戦で劇的な優勝を成し遂げた昨年のAIG全英女子オープンで世界中から脚光を浴びたとはいえ、渋野はプロツアーに本格参戦してまだ2年目。しかも初の米本土での実戦ラウンド。そこで通用するほど、しっかりと固まった技術力も経験値もまだない。 渋野とは対照的に、同学年の畑岡奈紗(21、アビームコンサルティング)は、決勝ラウンドの2日間で67、69をマークし、通算9アンダーの7位タイと2年ぶり3度目のメジャーでのトップ10入りを果たした。畑岡は、2017年からLPGAツアーに本格参戦している。メンタルと経験値の差が如実に結果の差となって現れた。 だが、”シブコ”はポジティブだ。 「初日に今年一番のゴルフができて、前半を耐えながら後半にスコアを落とした2日目は、それでも予選を通過できたことですごく嬉しかった。3日目は100点に近いゴルフができて、自分でもかなり満足できた。いままでの自分のゴルフだったら、昨日のスコアは出ていなかったので」 最高気温が40度を超えた、タフなトーナメントを最終日まで戦い抜いた軌跡は、今後への財産になると考えていいだろう。 「この難しいコースで4日間戦えたことで自分自身の経験値を上げられたし、これから先にもつながっていくと思うので。アメリカであと3試合あるので、もうちょっと立派になって帰りたい」