【Q&A】続く物価高、日銀の金融緩和政策の変更はあるか? どうなる金融政策決定会合
一部の市場関係者は政策修正を予想
Q:一部の市場関係者は7月の金融政策決定会合で「政策修正」を予想している。どういった理由でどのような変更が予想されているのか? A:植田総裁を含む日銀の政策委員は「企業の価格設定スタンスが積極化している」、「企業行動に明らかな変化がみられ、値上げ・賃上げが企業戦略に組み込まれてきている」「企業の価格転嫁が想定以上に続く可能性が注目される」などといった具合に、企業が積極果敢な値上げを実施している現状に鑑みて、物価(見通し)が上振れる可能性について言及しています。またこれまでの金融緩和の副作用が蓄積する中、6月の金融政策決定会合では、ある政策委員が「イールドカーブコントロールについては、将来の出口局面における急激な金利変動の回避、市場機能の改善、市場との対話の円滑化といった点を勘案すると、コストが大きい」と発言していたことが明らかになりました。こうした認識を前提にすると、YCCという強力な金融緩和策を修正するのは理に適っているように思えます。筆者も、10年金利の変動許容幅を現在の0%±0.5%を0%±1%に拡大するなどと言った政策変更があっても不思議ではないと考えています。
ようやく見えてきた物価2%の「芽」
Q:それでも多くの市場関係者が現状維持を予想するのはなぜか? A:植田総裁は「拙速な政策転換を行うことで、ようやく見えてきた2%の物価目標達成の『芽』を摘んでしまうことになった場合のコストは極めて大きい」「引き締めが遅れて2%を超えるインフレ率が持続するリスクよりも、拙速な引き締めで2%を実現できなくなるリスクの方がはるかに大きい」といった具合に金融緩和の修正に対して慎重な見解を繰り返しています。約30年ぶりに芽生えたインフレの「芽」の生長をじっくりと見守りたい構えです。直近の7月18日には持続的・安定的な物価2%目標達成に「まだ距離がある」とも発言しています。久方ぶりの賃金・物価上昇を「芽」に例える表現は、もはや定型句となりつつあり、それを反故にするような政策修正が総裁就任から僅か3、4カ月という短期間に決定されるとは思えません。 Q:その他に7月の金融政策決定会合の注目点は? A:6月の金融政策決定会合における議論をまとめた「主な意見」には、金融政策の現状維持(≒YCCの継続)に対して反対票を投じることも辞さないとされる発言がありました(どの政策委員の発言であるかは明らかにされていない)。実際にその「声の主」が反対票を投じれば、内部の意見対立が露となり、金融政策の修正観測が台頭する可能性があります。その場合、円高・株安・長期金利上昇が観察される可能性があると考えます。
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