モデルは1型のみ 大手シューズメーカー出身のデザインデュオが手がける街履き専用スニーカー「CLEMENS(クレメンス)」
世の中に星の数ほどあるスニーカーだが、よく考えるとその大半はスポーツをバックグラウンドに持っている。たとえば、コンバースの「オールスター」はバスケットボール、ニューバランスの「M1300」はランニング、ヴァンズの「エラ」はスケートボードという具合だ。 スニーカーの起源はスポーツシューズだから、当然といえば当然なのだが、そんな常識に疑問を抱いたスニーカーブランドがある。「CLEMENS(クレメンス)」だ。 デビューして5年余りが経つが、モデルは1型のみで、シーズンコレクションも展開しない。しかも、購入先は公式オンラインストアとセレクトショップのBshopだけにもかかわらず、SNSや口コミで評判が広まり、現在ではサイズ切れも続出している。 ブランドの実態を探るべく、今回は2人のデザイナーにお話をうかがった。
スポーツに起源を持たない、街を歩くためのスニーカー
「スニーカーが好きな人たちは、バッシュやランシューを普段の生活で使っているわけですが、本来それらは、それぞれのスポーツでより良いパフォーマンスを発揮できるよう設計されています。では、街履きに特化したスニーカーを作ったら、どんなものになるのか? そんな思いがものづくりの原点です」 (物延さん) 「そもそも街って決してイージーなシチュエーションではないんです。雨でぬれたツルツルのコンクリートの上を歩くこともあれば、夏の日差しで高熱になったアスファルトの道路を歩くこともある。私たちが目指したのは、時には過酷なフィールドにもなる街を快適に歩くためのプロダクトです」(大谷さん)
2人は日本の大手シューズメーカーでデザイナーをしていた経歴を持つ。物延さんはランニングとトレイルランニング用のシューズを、先輩にあたる大谷さんはサッカーのスパイクや陸上競技用シューズなどを手がけていたという。 その後、物延さんは退職して渡英。国際情報誌の親会社にあたるブランディングエージェンシーに勤務し、パッケージや空間デザインを手がけた。2人の親交は続き、2年後に大谷さんもイギリスへ渡り、ヨーロッパのデザインやカルチャーを学んだ。 「帰国してからは、2人ともブランディングの仕事をしていましたが、ずっとスニーカーを作りたい、という思いがありました。知識や経験や人脈など、必要な要素が揃ったこともあり、ブランドを立ち上げることにしたんです」(物延さん) 「ただ、どうせやるなら、自由に、楽しくやりたいと思いました。トレンドや売れることを追い求めていけば、結局、すべてのブランドの商品が同じようなものになってしまってつまらない。だから、私たちはマーケティングや生産性を度外視して、自分たちがカッコいいと思うスニーカー像を追求することにしたんです」(大谷さん)