モデルは1型のみ 大手シューズメーカー出身のデザインデュオが手がける街履き専用スニーカー「CLEMENS(クレメンス)」
存在感のある見た目とは裏腹に、履き心地は軽くしなやかだ。
「ランニングシューズの場合、土踏まずの部分に樹脂製のシャンク(ソールの変形を防ぎ、ヒールを固定するパーツ)が内蔵されている場合が多い。ですが、このモデルは街履き用ですので、シャンクを省いて軽さとしなやかさを重視しました。また、ブリッジ構造になった土踏まず部分が足のアーチを支え、かつ衝撃を吸収することで疲れを軽減します」(物延さん)
スニーカーカルチャーの要素が吹き込まれたディテール群
アッパーにはさまざまなスニーカーカルチャーからインスパイアされたディテールがちりばめられている。特に目を引くのは、アッパーの上部に取り付けられたブランドロゴ入りのタグ。これは2人が少年時代に熱中したサッカーに由来する。 「1990年代のサッカースパイクのベロって、履き込むにつれて曲がっていくんです。私たちはこの雰囲気が好きで、タグにその要素を表現しました。経年変化によって徐々にクッタリして、めくれていきます」(物延さん) 「ベロにある円形のホールは、紐を収納することができたり、履くときに指を引っかけられたり、実用的なメリットもあります」(大谷さん)
甲部分に使われたナイロン素材にも特別な思い入れがある。 「元ネタは1970年代のランシューです。メッシュではなく、ナイロンを選んだ理由は、風合いがレトロで、経年変化にも独特の味わいがあるから。じつは、ある程度シワができるように設計していて、このクシャッとした風合いが好きなんです」(物延さん) 独創的なディテールのデザインは、1980年代にミラノで活動していたデザイン集団「MEMPHIS(メンフィス)」の影響を受けているという。 「たとえば、かかと部分のリフレクターを丸いドット柄にしたように、デザインと機能が一体化するよう心がけました。ほかにも幾何学やギザギザのパーツも通常のスニーカーにはあまり見られないデザインだと思います。 バウハウスのようなドイツのデザインも好きですが、MEMPHISのようなイタリア的なプロダクトデザインって、視覚的なインパクトがあって、人間の感覚に響くユーモアがあるんです」(大谷さん)