【KEIRINグランプリ】北井佑季はなぜ先行できなかったのか GPを3度制した山田裕仁氏が語る“一発勝負で勝つために不可欠なもの”とは
レース後は脇本選手のそばに自転車を寄せ、手を堅く握って、互いの健闘を称え合った古性選手。この優勝で古性選手の年間賞金獲得額は3億8311万5596円と、2022年の脇本選手を大幅に上回る記録更新となりました。2024年の競輪界を終始リードしてきた古性選手のグランプリ優勝は、フィナーレにふさわしい結果といえるでしょうね。3着に敗れたとはいえ、脇本選手も本当に強いレースをしていましたよ。 ゴール前での勝負にすべてを賭けて、しかし届かなかった清水選手。悔しさは当然あるでしょうが「やれることは全部やった」「力負けだ」という納得感もあると思います。初手から中団の位置を取りにいって、その後も冷静に先の展開を見据えた上で、近畿勢をマークし続けた。タイトルは獲れなかったとはいえ、今年の上半期を大いに盛り上げた清水選手の2着も、終わってみれば納得できる結果でしょう。
北井はなぜ先行できなかったのか
今年のグランプリを振り返ってみて、勝負を分けたポイントは2つ。まずは、古性選手が初手で前受けを選ばず、関東勢に譲ったことです。レース前には近畿勢の前受けが想定されていましたが、後ろ攻めの北井選手が前を斬った直後に眞杉選手がついていく展開や、眞杉選手が前を先斬りしてその後に北井選手が仕掛ける展開だと、後方に置かれる可能性がありますよね。実際、前受けした眞杉選手は後方に置かれ、見せ場なく敗れています。 そしてもうひとつは、北井選手が前を斬った後に「緩めた」こと。その背景にあったのが、デキに対する自信のなさなのか、それとも自分の優勝を考えた結果だったのか…それについては、レース後のコメントを読んでも本当のところはわかりません。ただ、やはり北井選手のデキは本物ではなかったと思いますよ。いい頃であれば、脇本選手が叩きにきたときに突っ張れて、前でもがき合えているはずですからね。 北井選手がもっと気っ風よく逃げて、ラインから優勝者を出すような走りに徹するのではないか…と想像していた方も多かったでしょうが、グランプリという“特殊”な舞台でそれを成すのは、メンタル面においても本当に難しい。これは眞杉選手にもいえることですが、全員が優勝だけを狙ってくるこの一発勝負レースで優勝するには、やはりある程度の経験値が必要不可欠なのでしょう。