年収1400万円大手商社マンが専業主婦の妻と離婚…「生活レベル」を落としたくない妻の「要求」
妥当な金額ではあるが……
そして、追い打ちをかけるようにマミが次のように言った。 「子どもたちはきっとこのまま私立の学校にいくと思うし、当たり前だけど大学にもいくと思います。今以上にお金がかかることもあると思うけど、責任は持ってもらいたい。それに、いま家にお金がなくて財産分与もないので、年金分割くらいはお願いしたい」 もう太一は考える気力をなくし、めまいすら感じた。マミの言っていることが無茶苦茶なことであれば、取り合わなければいいだけだ。しかし、マミが言っていることはそんなに無茶でもないのだ。確かに、子どもたちが今通っている学校や習い事を辞めさせるのはかわいそうだし、できれば転居もさせたくなかった。生活費としてひとり5万円というのも、家賃以外の生活費が含まれると考えると、決して高いとは思わない。そして、年金分割という制度は免れないものだということも理解していた。 何度か話し合った後、当面の2年間はマミの条件に応じるけれど、その後はマミも就労し、教育費を何割か負担することで合意した。太一は養育費算定表を使うともっと減額されることは知っていた。しかし、せめて親としての役割をしっかり果たそうと考え、マミの言い分をおおむね受け入れたのである。太一は、そのことを感謝してほしいと願ったが、その願いは叶わず、飲み込むことにした。面会交流については、月に1回、子どもふたり同時に3時間程度行うことに決まった。本当は、もう少し回数を求めたかったが、子どもたちが習い事で忙しいのも知っていたし、発表会や試合は見にきてもよいとのことだったので、合意することにした。
2年後、話し合いが再開
そして2年後、また太一からADRへの申し込みがあった。目的は養育費に関する協議だ。幸いにして、マミも応じるとの返答であり、話し合いが再開したが、マミから驚くべき提案があった。「このままいけば、教育費がかさみ、私もあなたもお金が不足することが目に見えています。ですので、一番負担が重い家賃を浮かせるべく、都営住宅の優先入居に応募したら、無事に当選しました。ですので、今後家賃はいらないので、多めに教育費を払ってもらえませんか」 太一は、マミが家計を気にして自ら生活レベルを下げたことに驚きつつも、すぐにその案に賛成した。そして、「そんな風に主体的に考えてくれて嬉しいよ。ありがとう」と付け加えた。 マミは「あなたが無責任に離婚を切り出したことで、私もこうせざるを得なかったのよ。それを『変わってくれてありがとう』みたいに言われても腹立たしいだけですけど」