減収減益の日立が最高益のパナソニックに株価で大差をつけた「決定的な理由」
今回は、日立製作所とパナソニックホールディングスの決算書を見てみよう。日本を代表する総合電機メーカーの2社は、近年、大規模な構造改革を進めてきた。そんな2社の株価の推移を見てみると、明暗がくっきり分かれていた。その理由とは何か。(中京大学国際学部・同大学院人文社会科学研究科教授 矢部謙介) 【図解】パナソニックホールディングスの決算書の特徴は? ● 巨額赤字を計上してから 構造改革を進めてきた日立製作所 今回は電機業界の中から、日立製作所とパナソニックホールディングス(以下、パナソニックHD)の決算書を取り上げる。日本を代表する総合電機メーカーとして有名な両社だが、近年は大きな事業再編を進めていることでも知られる。 日立製作所は、2009年3月期に7873億円という、当時の製造業としては過去最大の巨額最終赤字を計上して以降、積極的な事業構造改革を行ってきた。 12年3月にHDD(ハードディスクドライブ)事業を米ウエスタンデジタルに売却したのを皮切りに、その後は日立物流(現ロジスティード)、日立キャピタル(現三菱HCキャピタル)などの上場子会社を次々と売却。最近では、22年8月に日立建機の株式を一部売却、23年1月には日立金属(現プロテリアル)を売却するとともに、自動車部品を手掛ける日立Astemoの株式を23年10月に本田技研工業に一部譲渡することで持分法適用会社(関連会社)とし、連結子会社から外している。 さらに、24年7月には米ジョンソン・コントロールズ・インターナショナルと共同出資で設立していた空調合弁会社で、「白くまくん」ブランドで知られる家庭用エアコン事業を手掛けているジョンソンコントロールズ日立空調を独ボッシュに売却することを発表した。 その一方で、中核となる事業ドメイン(事業を行う領域)を「社会イノベーション事業」と定義し、その軸としてデジタルトランスフォーメーション(DX)支援を行う「ルマーダ」を打ち出した。また、そのルマーダとの間でシナジー(相乗効果)が期待できる、日立ハイテクノロジーズ(現日立ハイテク)などの上場子会社については完全子会社化(親会社にすべての株式を保有されている子会社にすること)や吸収合併を進め、積極的にグループ内に取り込んだ。こうした売却や完全子会社化などの結果、かつて多数あった上場子会社は、23年3月期にゼロとなった。 また、20年7月にはスイスABBからパワーグリッド(送配電)事業を約7400億円で買収(株式の約8割を取得、22年12月に完全子会社化)。さらに、21年7月にはDX支援サービスを手掛ける米グローバルロジックを約96億ドル(有利子負債の返済を含む、日立公表ベースで約1兆368億円)で買収するなど、積極的なM&Aを行っている。 日立製作所の24年3月期決算は、売上収益(売上高に相当)が約9兆7290億円、親会社に帰属する当期純利益(以下、当期純利益)が約5900億円となり、当期純利益が過去最高を記録した前期との比較では減収減益となった。その主な要因としては、売却対象となった日立金属が連結から外れたことと、日立建機や日立Astemoの株式を一部売却し、持分法適用会社化したことなどが挙げられる。