なぜ日本には地震が多いのか…地球科学が突き止めた「列島の異変」と「次の大地震」
予測しうる「南海トラフ地震の発生時期」
実は、南海トラフ巨大地震の発生時期はある程度予測が可能です。海域で起こる巨大地震によって陸の地盤が規則的に上下する現象から導くことができるのです。室戸岬に近い高知県の室津港で観測された地震前後の上下変位量を見ると、1707年の地震では1.8メートル、1854年には1.2メートル、1946年には1.15メートル、それぞれ隆起しました。 この現象は、海溝型地震による地盤沈下からのリバウンド隆起と呼ばれています。1回の地震で大きく隆起すればするほど次の地震までの時間が長くなる規則性があって、それを元に次の地震が起きる時期を予測すると、2035年ごろとなるのです。ただし、先ほど述べた内陸地震と同様に、現在の地震学では海溝型地震の発生年月を特定することは不可能です。そこで、この中央値に前後5年の誤差を見込んで、2030~2040年には確実に起きると地球科学者は予測しています。 南海トラフ地震が発生する約40年前から発生後10年程度までの期間は、活断層が動き内陸地震の発生数が多くなります。現在は次の巨大地震発生前の活動期に入っており、1995年の阪神・淡路大震災は、この活動期に入って最初の大地震だったのです。 その後、2005年の福岡県西方地震、2013年の淡路島地震、2016年の熊本地震、2018年の大阪北部地震など、西日本で直下型地震が次々に起きました。今後、日本列島でさらに内陸地震が増えてピークに達したとき、最後の打ち止めとして2030年代に南海トラフ巨大地震が起きると予測されます。 なお、これまでの南海トラフ地震は1707年、1854年、1946年と約100~150年おきに規則正しく発生しています。この履歴を考えれば、次の巨大地震が「パス」することは絶対にありません。 ちなみに、歴史を振り返ると、戦後の日本が高度成長を実現できたのは、1960年代から1991年のバブル崩壊までの約30年間に、たまたま日本列島で直下型地震が少なかったからです。これは日本社会にとってまさに僥倖だったと言っても過言ではないのです。 * * * 本連載では、人気の地球科学者と地学講師が、「高校地学」の内容と魅力をわかりやすくお伝えしていく。
鎌田 浩毅、蜷川 雅晴