なぜ日本には地震が多いのか…地球科学が突き止めた「列島の異変」と「次の大地震」
「3・11」によって起きた「日本列島の異変」
東日本大震災によって、日本列島が含まれる大陸プレートにかかる力が変わってしまいました。それまでは海洋プレート(太平洋プレート)が大陸プレート(北米プレート)の下に沈み込むことで、陸のプレートには押される力が強くかかっていました。その力関係が、M9.0の巨大地震によってプレート間の固着域(プレートどうしがずれ動かない領域)が破壊されたことで、急変したのです。 大陸プレートの先端が跳ね返って海側に引き延ばされた結果、日本列島の海岸線は最大5.3メートルも太平洋側に移動しました。日本の陸地面積も0.9平方キロメートルほど拡大しています。また海岸沿いの地盤は最大1.14メートル沈降し、陸のプレートの先端で生じたひずみを解消しようとして、内部の岩盤の弱い部分が割れ、内陸地震が起きはじめたのです。 その結果、M3~6規模の地震の数は年間で震災前の約5倍に増加しました。少なくとも今後数十年は、このペースで内陸地震が続くものと考えられます。 地震によって地下の岩盤が破壊されることで、断層ができます。東日本大震災により始まった「大地変動の時代」では、日本列島に2000以上ある活断層(くり返しずれ動いて地震を発生させる断層)の活動度が上昇します。最大の懸念は、約4000万人が暮らす首都圏の地下で19ヵ所の震源域が想定されている「首都直下地震」です。 ところが、現在の地震学では、直下型地震の短期予知はまったく不可能とされています。よって、首都直下地震をはじめとして内陸地震は日本中の「どこでいつ起きてもおかしくない」と考え、速やかに地震防災対策を策定する必要があるのです。
南海トラフ巨大地震のメカニズム
頻発する内陸地震のもうひとつの懸念が、2030年代に発生が予想されている南海トラフ巨大地震です。西日本の太平洋側は約100年おきに海溝型の巨大地震に襲われていて、その発生前後に内陸地震を活発化させるのです。過去に起きた地震を詳しく調べると、南海トラフ地震の発生を挟んで内陸地震の「活動期」と「静穏期」が交互にやってくることがわかります。 南海トラフ巨大地震は東から東海地震、東南海地震、南海地震という3つの部分で構成され、次回は約300年に1度の頻度で三地震が連動するタイミングに当たります。さらに宮崎県沖の日向灘の震源域が加わった四連動地震となる可能性も高いのです。その結果、東日本大震災(M9.0)を超えるM9.1の巨大地震が発生すると予測されています。 内閣府の被害想定では、九州から関東までの広い範囲に震度6弱以上の大揺れをもたらし、10県にわたり震度7となる地域が広がります。中央防災会議の想定では、死者・行方不明者の総数は32万人超、全壊する建物238万棟、津波で浸水する面積は1000平方キロメートルに及びます。すなわち、死者・行方不明者が2万人以上にのぼった東日本大震災よりもさらに1桁大きい巨大災害になると見込まれるのです。 また、南海トラフ巨大地震は、日本経済の中核を担う太平洋ベルト地帯を直撃することが確実で、経済被害は220兆円を超えると試算されています。東日本大震災の被害総額20兆円の10倍以上です。ちなみに、220兆円は政府の1年間の租税収入(65兆円)の3倍超に相当します。さらに地震発生後20年間で最大1410兆円の経済損失が予測され(土木学会試算)、日本経済は「沈没」しかねない状況に陥ってしまいます。