三者三様の強さを見せる「コム デ ギャルソン」系列3ブランド、アクティブなスタイルにも上質感漂う「エルメス」 2025年春夏パリコレ日記Vol.5
「コム デ ギャルソン」のディテールに見る、強いメッセージ
村上:そして、「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」ですね。詳細はリポートをご覧いただければ、と思いますが、展示会で洋服、というより作品を間近で観察すると、川久保さんのモヤモヤの一旦が垣間見えます。柔らかなメッシュ素材に時には樹脂を振りかけ固めてしまった、まるで今の心のモヤモヤをハッキリとした意志を持ち可視化しようとしたようなシルエットのドレスには、難民、環境破壊に対するメッセージ、そしてゴミの写真がシワシワになって放り込まれていました。今の社会に対する、言語化はしきれていないけれど、 強いメッセージのようです。言語化できないけれど、まず形にして、世の中に問いかけてみる。「コム デ ギャルソン」の度胸を今シーズンも感じました。
藪野:川久保さんが今回表現したのは、「不確かな未来」。透明感のある素材使いについては、「世界で起こっているさまざまなことに対する空気と透明性で立ち向かうことは、ある種の希望を意味するかもしれない」と説明しています。ここ数シーズンは、クリエイションを通して、混沌とした今の混沌とした世界を憂いたり、そこに怒りを抱いたりしつつも、その中に希望を見出そうとしていますね。今季も、強いメッセージ性を感じました。
若い感性でストリート感を取り入れた「アン ドゥムルメステール」
さて、お次はステファノ・ガリーチ(Stefano Gallici)による「アン ドゥムルメステール(ANN DEMEULEMEESTER)」です。まだ20代後半の彼が就任から3シーズン目になりますね。
村上:私は初めて見ましたが、良い感じですね!そりゃ、創業デザイナーのアンが大好きだった人にすれば、ずいぶんストリートで若者向けのブランドに変身しつつあることを寂しく思う人もいるでしょう。でも私は、「アン ドゥムルメステール」ならではの壊れそうなほどに繊細、フラジャイルなムードを、レイヤードで上手にストリートなスタイルに取り入れている印象を受けました。正直繊細すぎて現実離れしていた「アン」スタイルが、とても身近なものに思えました。レースのスリップドレスにバックルをいくつも取り付けたコンバットブーツのコーディネート、メッセージTとジャケットにやっぱりレースのストールを貴族の立ち襟のように巻きつけてカーゴパンツのようなリラックスシルエットのボトムスやバギーデニムと合わせたスタイル、一番のお気に入りはレースのブラウス&シルクサテンのパンツにダメージTシャツを組み合わせたメンズのルックです。カワイイ!でも47歳が挑戦するには少し厳しいでしょうか(苦笑)?