休職したら、給料はどうなる?産業医が「傷病手当金」の仕組みを解説。パフォーマンスが「0.1」のまま10日働いても、成果は「1」にしかならない
◆休んだら、給料はどうなる? ただ、現実問題として、休んでいる間のお金の問題は皆さん心配されるところです。特に、若い方で就職のために上京した方などは、「貯金もそんなにないので、働いて稼がないと……」と気にされます。 でも、お金についてもそんなに心配は要りません。会社から給料は出なくても、病気やケガで会社を休んでいる間の生活を守る制度として、公的医療保険の「傷病手当金」というものがあります。 連続する3日間を含み、4日以上仕事に就けなかった場合に、4日目から支給され、支給が開始された日から通算で1年6か月の間、もらえます。以前は、支給開始から最長で1年半で、その間に出勤して給与の支払いがある期間があったとしても、その期間も含めて1年半まででした。 例えば、半年休んだあと復職して、3か月間出勤したけれども、再び体調を悪くしてしまってもう一度休職することになったという場合。 以前は、傷病手当金が支給される期間は、出勤して会社から給与をもらっている3か月の間も含めて最初の支給開始から1年半まででした。つまり、傷病手当金が支給されない3か月間も含めてカウントされたので、2度目の休職では9か月までだったのです。 でも、2020年7月からルールが変わり、傷病手当金を支給していない期間は含めないことになったので、この例だと、2度目の休職の際も1年間は傷病手当金が支給されます。
◆傷病手当金の額 傷病手当金の額はというと、人によって変わります。 ざっくりと説明すると、月給の3分の2です。休職前の直近1年間の月給の平均額の3分の2が、傷病手当金として毎月支給されます。 休職に入ると自動的に傷病手当金が振り込まれるわけではなく、書類を揃えて申請する必要がありますが、健康上の理由で休んでいて、ちゃんと通院して治療をしていることが証明できれば問題なく申請は通ります。 申請書類には医師が記入する欄もあり、「気分の落ち込みや不眠に対して治療中。上記のため労務不能」などと記入して、これまでに通らなかったことはありません。 事後申請で、毎月申請する人、数か月分まとめて申請する人、復職後にまとめて申請する人と、人によっていろいろですが、申請してから実際に振り込まれるまでには多少のタイムラグがあります。申し込んでから2週間から1か月かかることは念頭に置いておきましょう。 個人事業主の方は別として、会社勤めの方でしたら傷病手当金をもらえるので、「給料がストップしてしまう……」という心配はある程度カバーされます。産業医としても主治医としても、一定期間の休養が必要と判断した方には「お金のことは傷病手当金がありますから、今は体調を整えることを最優先に考えたらどうですか?」と、お伝えしています。 ※本稿は、『産業医が教える 会社の休み方』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
薮野淳也
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