【インタビュー】部屋と孤独と写真と。アレック・ソスとの一問一答。|青野尚子の今週末見るべきアート
――この展覧会のテーマである「部屋」(インテリア、内部空間)には物理的な意味合いと心理的な意味合いがあると思います。また部屋はそこに住む人の内面を反映していることもよくあります。 そうだね。ファッションが自己表現の手段の一つと考えられているのと同じように部屋も別の手段による自己表現の一つだ。ただし部屋の場合はもっと限られた人々に向けた自己表現になるけどね。僕は高校のころフードデリバリーのアルバイトをしていて、注文を受けた家のドアから中をのぞき込むのが好きだった。
――会場には本棚を写した写真も展示されています。 本を通じて持ち主がどんな人か、分析するのも好きなんだ。2点組の本棚の写真はルーマニアの修道院で撮ったものだ。その修道院には僧がほとんどいなくて、半分廃墟になっていた。もう一つの写真はウクライナで撮ったもの。ある女性の本棚なのだけれどちょっと変わっていて、壁の高いところにあった。僕は自分の写真についてあまり詳しいことまで言わないようにしている。見る人に、写真に写っていないものを想像してほしいんだ。僕の写真の半分は観客が作っている。
――ミュージシャンのプリンスにまつわる2つの家の話も面白いです。ひとつはプリンスが住んでいた家を借りている熱狂的なファンの部屋を撮った「I Know How Furiously Your Heart is Beating」シリーズの一点。もう一つはあなたが住んでいた家の敷地をプリンスが購入したという話です。まるでポール・オースター(*)の物語のようです。 以前、ソフィ・カルがオースターとコラボレーションしたことがあるけれど、僕は彼女の写真も大好きなんだ。さっき『僕の写真の半分は観客が作る』と言ったけれどテキストと組み合わされた、彼女のざらざらした写真の90パーセントは観客が作っている。リチャード・ロングの写真にも影響を受けた。彼はたとえば10日間、森の中を歩き回って見つけた葉や石を並べて写真を撮るといった作品をつくっている。見る人に彼の歩いているところや歩いた跡を想像させる写真だ。