「お求めやすいお値段になっております!」は<敬語もどき>で誤用?どこが違うかと言うと実は…
「頑張らせていただきます」「お名前様、いただけますか」「書類のほうをお送りします」…丁寧に言おうとして、おかしな日本語を使っていませんか?そんな中「盛りすぎないほうが誠実で潔い!」と断言するのが京都暮らしのコピーライター前田めぐるさんです。今回は、著書「その敬語、盛りすぎです!」より一部を抜粋して紹介します。 【書影】実は間違いだらけ「正しい敬語」の使い方。京都在住のコピーライター前田めぐるさん著書『その敬語、盛りすぎです!』 * * * * * * * ◆「お求めになりやすいお値段」じゃダメですか? 「いらっしゃいませ!お求めやすいお値段になっておりますよぉ!」なんと!私もお値打ち品は大好きですとも。 しかし、スーパーやデパ地下などで一体いくらに?と値段以上に気になるのがその言い方。 要は、誤用なのです。 値下げなので変化を意味する「なっております」は合っています。 問題は「お求めやすい」です。 一見、敬語のように見えますが、実は敬語もどき。 「お求めになりやすい」が正しい表現です。 よくよく考えると、普段「お越しやすい場所」「お話しやすい雰囲気」「お支払いやすい仕組み」「お考えやすい環境」「お歩きやすい靴」などの言い方はあまり聞きません。 最後の「お歩きやすい靴」を自然に受け止める人はまだ少なく、文化庁の調査(令和元年度)では「お歩きやすい靴を御用意ください」を「気にならない」と答えた人は2割。 8割近くの人が「気になる」と答えています。
◆「やすい」の聞き間違い? これらを差し置いて、なぜ「お求めやすい」だけが、絶賛売り出し中とばかりに店頭をにぎわせているのでしょうか。 もしかしたら「やすい」「お値段」の語も混乱の元ではと推察します。 「お求めやすい」と口にしてみてください。 耳から入ると「お求め易い」と「安いお値段」両方が余韻として残りませんか? その聞き間違いを誘うようにこの誤用が仕組まれているとしたら……なんて勘ぐってしまいそうにもなりますね。 まあ、そんな裏があってもなくても、「お求めやすい」は尊敬語もどきで誤りです。 「お求めになりやすいお値段になっております」だと「なるなる続き」が嫌ですか? それなら威勢よく「タイムセールです!今だけお値頃!お求めになりやすいお値段です」と「限定」を強調するのも得策。 物価上昇が気になるご時世、値頃品というだけでも十分魅力的だと思うのです。