「お求めやすいお値段になっております!」は<敬語もどき>で誤用?どこが違うかと言うと実は…
◆「先生はもうすぐ来られます」先生呼びの業界にも変化が!? ある弁護士事務所に行ったときのこと。 見出しの「先生」とは担当弁護士のことで、身内の上司を先生呼びしているのは、お茶を運んできた女性です。 担当弁護士は、売り主の後見人。 相手の売り主が高齢で認知症があるため、私はその後見人の事務所に出向き、「先生」を待っていたのです。 国家資格を持つ士業の世界では、有資格者を「先生」と呼びます。医療関係・学校関係者の慣習と同じですね。 企業法務を行う弁護士は社員からそう呼ばれるでしょうし、有資格者同士でも「先生」と呼び合うでしょう。 しかし、事情があって後見人に依頼したのは、売り主の家族です。 依頼人でもない所外の相手に対する「先生はもうすぐ来られます」は、不自然に感じられました。
◆呼び方は「聞き手との関係性」や場面を考える 同じ状況がもし病院や学校なら自然です。 診察を待つ私に少し待つよう伝える看護師の言葉、三者面談を待つ保護者にそう伝える同僚教師の言葉……いずれも患者として、保護者として違和感を持つことはありません。 弁護士事務所でも、私が依頼主やその家族だとするなら「先生はもうすぐ来られます」はすんなり受け入れられる表現です。 つまり、冒頭で違和感を持ったのは、「ウチとソト」の関係だけでなく、診察や指導を直接受けているかどうかといった「聞き手との関係性」が全く考慮されていなかったからに他なりません。 「先生」呼びについては、近年、学校でも多少の変化が見られます。 生徒やその保護者に対しては「**先生はいらっしゃいません」と言うものの、そうではない校外の相手に「**教諭は外出中です」と言うこともあるようです。 「平田先生」でなく「平田教諭」と職名で呼んだり「いらっしゃいません」を「外出中です」と表したりするのは、過剰さを抑えた中立的な言い方です。 もちろん、そう呼ぶ人もいるというだけで、常識とされるほど定着はしていないかもしれません。 けれど、聞き手との関係性や場面を考えることなく、機械的に使う言葉よりは、重宝されてよい表現だと考えるのです。