今の宇宙で「ヒッグス場の崩壊」が起きていない以上、「原始ブラックホール」は無いかもしれない?
■ヒッグス場が崩壊していないという矛盾の解決策
理論的にはいつでもヒッグス場は崩壊しているべきなのに、実際には崩壊していないというこの矛盾には2通りの仮説が考えられます。1つ目は、原始ブラックホールはかつて考えられていたよりずっと少ないか、あるいは全く存在しないという仮説です。この場合、豊富な原始ブラックホールの生成を予測する多くの宇宙モデルは否定されることになります。この仮説の元では、宇宙モデルの根幹となる宇宙論の書き換えが必要になります。 2つ目は、原始ブラックホールは存在し、実際に蒸発しているものの、ヒッグス場の崩壊が起きていないという仮説です。この場合、蒸発によってヒッグス場の崩壊に十分な条件が揃っているにも関わらず、崩壊を防ぐ何らかの作用が働いていることになります。これは現在の物理学では全く予測されない現象ですが、ブラックホールの蒸発については未知の部分もあるため、可能性がないわけではありません。仮にこちらの仮説が正しい場合、未知の素粒子や相互作用を予言させるため、とても気になるものです。 今回の研究の著者の1人であるLucien Heurtier氏は、今回の論文が示すように、宇宙には小さな世界から大きな世界まで、まだまだ多くの謎が残っていると話しています。 Source Louis Hamaide, et al. “Primordial black holes are true vacuum nurseries”. (Physics Letters B) Lucien Heurtier. “The Higgs particle could have ended the universe by now – here’s why we’re still here”. (The Conversation)
彩恵りり / sorae編集部