大腸がんのリスクを下げる食物繊維、1日にどのくらい取るべきか、サプリでもいい?
健康維持に必要な食物繊維の摂取量は?
私たちが必要とする食物繊維の量には個人差があるが、米農務省は、消費カロリー1000キロカロリーあたり14グラムの食物繊維を取るよう勧めている。つまり、一般的な1日に2000キロカロリーの食事であれば、28グラムを摂取する必要がある。 厚労省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」は、18~64歳で男性21グラム以上、女性18グラム以上としている。米国がん研究協会は、がんのリスクを下げるには少なくとも1日あたり30グラムの食物繊維を摂取するよう推奨している。 ニューベリー氏によると、米国人の10人中9人は、1日に必要な摂取量を満たしていないという。また厚労省によれば、日本人の平均摂取量は1日あたり14グラム前後だと推定されている。 しかし、がんを予防するために食物繊維をどの食品から取るべきかは、まだ明らかになっていないと、米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院の疫学・栄養学教授であるエリック・リム氏は指摘する。 ニューベリー氏も、「がんのリスクを下げるなどの健康上のメリットが最大となる摂取量や、食物繊維の種類と構成については、まだ結論は出ていません」と言う。アイエンガー氏も、食物繊維の摂取によってがんのリスクが下がる効果を説明するには、遺伝やライフスタイル(食事や運動パターンなど)といった要素について、より徹底的な研究が必要だと考えている。 食物繊維をサプリメントから取る場合と食品から取る場合で、がんのリスクを同じくらい下げる効果があるかどうかもわかっていない。リム氏は、「最大の効果が期待できるのは食品から取る場合でしょう」と言う。なぜなら、食物繊維を豊富に含む食品には、ビタミンやミネラルや抗酸化物質などの健康に良い成分も含まれているからだ。
食物繊維の摂取量を増やすためのヒント
食物繊維の恩恵を受けるためには、ほとんどの人は毎日摂取する食物繊維の量を増やす必要がある。 まずは、ふだん食べているものを、食物繊維を多く含むタイプのものに替えてみよう。例えば、精製された小麦粉を使ったパスタやパンの代わりに全粒粉を使ったものを選んだり、白米の代わりに玄米を食べたりするのだ。 新たに加えるべき食品については、「栄養士が昔から言う『虹を食べよう』が有効です」とマクレラン氏。「虹を食べよう」とは、果物、野菜、全粒穀物、ナッツ類、シード類など、色とりどりの食品を取ろうという意味だ。アイアンガー氏は、なかでも豆類は食物繊維の宝庫だと言う。 食物繊維の摂取量を増やす際には、水を多めに飲むことと、摂取量をいきなり増やすのではなく徐々に増やしていくことが重要だ。さもないと、不快な胃腸の症状に悩まされることになる。ニューベリー氏は、毎回の食事に食物繊維を含む食品を少しずつ加えていくか、一握りのナッツ類かリンゴ1個を1日かけて食べることを勧める。 「私たちの多くは、意識的に努力しないと、1日に必要な食物繊維の摂取量を達成することができません。けれども、目安の量に足りなかったら効果はゼロということではありません」とコリンズ氏は言う。「摂取量が少しでも増えれば、その分だけ効果は出ます」
文=Daryl Austin/訳=三枝小夜子