大腸がんのリスクを下げる食物繊維、1日にどのくらい取るべきか、サプリでもいい?
なぜ大腸がんのリスクが下がるのか
食物繊維を十分に取ることのもう1つの利点は、大腸がんのリスクを減らせることだ。2003年に医学誌「The Lancet」に発表された、ヨーロッパで行われた大規模な研究は、食物繊維の摂取量が多い人は大腸がんのリスクが明らかに低いことを示していた。最近の研究のメタアナリシス(複数の研究のデータを集めて分析する手法)でも、一貫して同じ結果が出ている。 食物繊維の摂取が大腸がんのリスクを減らすのはなぜだろう? 一つには、食物繊維は腸内の善玉菌の餌になるからだ。善玉菌が食物繊維を分解してできる代謝産物は、炎症を抑えて細胞ががん化するのを防いでいると、米メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターで食事と代謝とがんの関係を研究している腫瘍内科医のニール・アイエンガー氏は説明する。「これらの代謝産物は免疫系を活性化し、がんに対する免疫を高めることもできます」 さらに、これらの代謝産物は、大腸の粘液層の産生を刺激して細胞間の結合を強化し、腸管内の有害物質が体内に漏れ出るのを防ぐ。アイエンガー氏は、「腸管壁浸漏(ちょうかんへきしんろう、リーキーガット)は、がんを引き起こす全身の炎症リスクを高めます」と説明する。「ですから、食物繊維を摂取して細胞間の結合を緊密に保つことには、がんを予防する効果があると考えられます」 メッサー氏によると、代謝産物の1つである短鎖脂肪酸は、大腸の内壁に栄養を与え、細胞を損傷から守るのにも役立っているという。 「食物繊維は便が大腸を通過するのを速め、大腸の細胞に老廃物が触れる時間を短くすることによっても、大腸がんのリスクを減らすことが研究で示されています」と、米ワイル・コーネル医療センターの栄養学者で消化器病専門医であるキャロリン・ニューベリー氏は言う。便には赤肉や超加工食品に含まれる発がん性物質が含まれていることがあるので、これは重要だ。 食物繊維が体重の管理に役立つことも大腸がんのリスクの低下に役立っている。「肥満や急激な体重増加は、大腸がんのリスクの増大と強く関連しているのです」とコリンズ氏は言う。 がん患者にとっても、腸内細菌叢(そう)に良い影響を及ぼす食物繊維は治療を助ける可能性がある。メッサー氏によると、食物繊維の摂取が化学療法や免疫療法の効果を高め、副作用を軽減することが、研究によって示されているという。