WALK on the WILDSIDE -全天候型放浪記- 宝島アイランドバックパッキング
WALK on the WILDSIDE -全天候型放浪記- 宝島アイランドバックパッキング
鹿児島港から村営フェリーで12時間。トカラ列島の最南端に宝島はある。キャプテン・キッドが財宝を隠したといわれる伝説の島。僕はこの宝島へバックパッキングの旅に出た。それはタカラモノのような日々だった。 編集◉フィールドライフ編集部 文◉ホーボージュン 写真◉山田真人。
だれも知らない島。僕も知らない島。南の果ての宝島。
宝島はニューヨークよりも遠かった 左舷に広がる水平線に夜明けの光が差し始めると、村営フェリー「としま2」はゆっくりと船体を揺らし始めた。黒潮本流の巨大なうねりが1953トンの船体を軽々と持ち上げ、2等寝台の狭いベッドで寝ていた僕を揺すり起こす。ぼんやりと目を開けるとハウリング気味の船内放送がもうすぐトカラ列島にさしかかることを告げていた。 神奈川の自宅を出たのは昨日の朝10時だった。それから19時間が経つがまだトカラ列島の入り口だ。目指す宝島まではここからさらに6時間かかる。家から片道25時間。宝島はニューヨークよりも遠いのだ。 出発前、友人に「宝島に行くんだ」と話すとほぼ全員が「ディズニーランド? 」という顔をした。そのぐらいこの島は知られていない。しかし秘島マニアにとって宝島はいつかは訪れたい島のひとつだ。島全体が隆起したサンゴ礁でできていて、空から見るとハートの形をしている。宝島というロマンチックな名前はイギリスの有名な海賊キャプテン・キッドが財宝を隠したからだそうで、島には財宝を隠した鍾乳洞もあるという。 もちろん僕は信じていない。キャプテン・キッドは実在の人物で、私掠船「アドベンチャーギャレー号」に乗り込み、大西洋やインド洋で海賊行為を繰り返していた。キッドは1701年に吊し首にされたのだが、捕まる前に莫大な財宝を密かに隠した。その一部はニューヨークで発掘されたが、その額があまりに少なかったためほかにも埋蔵金があると噂され、カリブ海や西インド諸島のほか、東南アジアやトカラの宝島までもがその候補地に挙がったのだ。 しかし史実としてキッドの船は東シナ海には到達していないし、どう考えても日本に財宝を隠す理由がない。完全な伝説だ。それでも僕は宝島に行きたかった。だって、おもしろそうじゃないか。