西武の辻監督が抗議した「観客が捕手の構えたミットの位置を教える」”スパイ行為”はどんな影響を及ぼすのか?
楽天―西武戦(18日・楽天生命パーク宮城)で西武の辻発彦監督がネットから飛ぶファンの声に異例のクレームを行った。「インコース!」など、投球直前にキャッチャーのミットの構えを教えるファンの声がグラウンドレベルで複数回にわたって聞こえているという報告を森友哉、源田壮亮らから受けた辻監督が、8回の攻撃前に山路球審に両手で×を示す動作をしながら「注意してもらいたい」と抗議。8回の楽天の攻撃を前に「プレーを妨げになるような大きな声はお止めください」との場内アナウンスが行われ場内警備が強化された。 無観客試合では、6月21日のヤクルト-中日戦で、放送席から実況アナウンサーのキャッチャーの構えなどを伝える声がグラウンドレベルまで聞こえたため、中日の与田剛監督が審判団に訴え対策が施されたことがあった。有観客試合でも上限5000人に制限された中では、新型コロナウイルスの感染予防のため、鳴り物や大声を出しての応援がガイドラインで禁じられているため、無観客と同様、ファンが大きな声を出せば、ハッキリとグラウンドに通る状況にある。この日の試合も観客動員は、3355人に抑えられていた。 甲子園球場では、奇声、大声のヤジの類が飛び交い、球審が注意する場面もあったが、今回はヤジではなく「インコース!」など試合に影響を及ぼす“スパイ行為“につながるような声が聞こえているのだから、辻監督も放ってはおけなかった。 実際、キャッチャーのミットの構えを事前に教える一種の“スパイ行為”は、どれだけの影響、効果を及ぼすのか。“ノムラID野球”の継承者として楽天、西武の両チームでヘッドコーチ、作戦コーチを務めた経験のある評論家で新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ強化アドバイザー兼総合コーチの橋上秀樹氏は、こんな見解を示す。 「まだお客さんが少ないので鮮明にそういう声が聞こえるのでしょう。中日の与田監督が無観客の神宮球場で解説の声でキャッチャーの構えがわかると審判に訴えていましたが、それと同じじゃないですかね。キャッチャー、バッテリーにしてみれば、構えたコースを“インコースだ、アウトコースだ”と、ばらされるのは、心理的にいいものじゃありません。バッターも、それが聞こえたとすれば、多少は耳に残ります。アウトコースと聞こえれば、やはり、そこをケアすることになりますから、少なからず影響を及ぼします。ただ、コースが事前にわかることは、すべてがバッター側のプラスになるわけでもなく、逆に余計なことを考えることにもなり、逆球が来たら対応に遅れる場合もあります。お客さんが勝手にやっていることでしょうが、お互いにとっていいことではないでしょう」