西武の辻監督が抗議した「観客が捕手の構えたミットの位置を教える」”スパイ行為”はどんな影響を及ぼすのか?
パ・リーグでは1999年から、このような行為はルールで厳しく禁じられているが、まだ明文化されていない時代には、ベンチや一塁コーチャーズボックス、ネクストバッターズ・サークルからの声や音で内外角の構えを教えていたことがある。最も原始的なスパイ行為だ。 もちろん、今回のような「インコース」「アウトコース」という直接的な声はなく、「叩け!」と、叫べば、内角というような隠語を使っての伝達。大騒動になったメジャーリーグ、アストロズのサイン盗みは、モニターを使ってキャッチャーのサインを分析して球種を盗んでいたが打者への伝達方法は、電子機器を使ったものもあったそうだが、ゴミ箱を叩いたり、指笛を使うなどという原始的な“音”だったという。だからこそグラウンドレベルで聞こえる“音”に対して選手も首脳陣も敏感になるのだ。 一般的にプロ野球で言われるスパイ行為とは、球種などのサインを盗むことだが、球種が判明せずとも、内角か、外角か、低めか、などキャッチャーの構えがわかり投げてくるコースが判明するだけで打者の読みは違ってくる。打者には、球種でヤマを張るタイプもいれば、コースにヤマを張るタイプの打者もいるが、キャッチャーのミットの構えがわかれば球種も想定しやすくなる。 そのため、昔は禁じられているキャッチャーの構えを直接、覗くバッターもいた。近鉄、オリックス、巨人で活躍したタフィ・ローズが、わからないように肘で目元を隠しながらキャッチャーの構えを探っていたのは有名な話だ。 一方、キャッチャーの側もミットを構える位置がバレないような対策をしており、故・野村克也氏は、「ギリギリまで構えるな」と、キャッチャーに徹底していた。 足音や体を移動する動きをワザと知らせておき裏をかく高等テクニックを駆使するキャッチャーもいる。だが、橋上氏によると「ルールでハッキリと禁止されてからは、キャッチャーには早めにミットを構えさせ投手が集中しやすくさせた方がいいという方向に変わっている」という。 クセ盗みを含めた情報戦もプロ野球の醍醐味だが、新型コロナウイルスの感染予防のために導入された「新しい応援スタイル」で禁止されている行為が、直接的にプレーに影響を与えるのであれば、なんらかの対策は必要になるだろう。各球場では、場内のスタッフに禁止行為を防ぐための“パトロール“を徹底させているが、観客のモラル意識を高めるための啓蒙活動も同時進行で進めていかねばならないのかもしれない。 なお試合は西武が楽天に4-3で勝利。西武は貯金「1」を死守、首位・楽天とのゲーム差を2ゲームとしている。