なぜ中日の与田監督は神宮の無観客試合で聞こえる「実況の声」にクレームをつけたのか?
中日の与田剛監督が21日、神宮球場で行われたヤクルト戦で、試合中の実況中継の声がグラウンドまで届き、球種が読まれるなどとの苦情を訴えた。今後、神宮球場側は、透明シートを放送ブースの前に設置し声が届かないような対策を行う予定だというが、静まり返った無観客試合ゆえのハプニング。ミットの音や打球音、選手の発する声までが聞こえるのも無観客試合ならではの醍醐味だが、今後は、選手のヤジの問題など、客入りが始まる7月10日までには、まだまだ予期せぬ問題が出てきそうだ。 9回が始まる前。ヤクルトの高津監督が嶋田球審に選手交代を告げた後に、与田監督が同球審に近寄って何かを話しかけた。それを聞いた嶋田球審は、駆け足で一塁側ベンチに向かいヤクルト高津監督ら首脳陣にスタンドの放送ブースを指差しながら説明をしはじめた。 中日の加藤球団代表の説明によると、与田監督が審判団に訴えたのは、「放送ブースから“捕手がインコースに構えた、アウトコースに構えた“という声が聞こえる。なんとかならないか」というものだった。 神宮球場のテレビ、ラジオの放送ブースは、ネット裏席の上段に設置してあるが、シャッターを開ける方式で、窓がなく前面が吹き抜けのような構造になっている。観客がいれば声援にまぎれ、その声がグラウンドまで届くことはないが、シーンと静まり返った無観客試合の球場では、声が鮮明に聞こえる。アナウンサーの声はよく通るのだ。 球場によって放送ブースの設置場所は違い、もっと高い場所や窓のあるブースもあるが、神宮のそれはグラウンドに近く、構造上、実況の声がグラウンドに響きやすいのである。 加藤球団代表が説明する。 「選手が与田監督に“放送の実況が聞こえます”と言ったみたいだ。無観客試合という状況の中で、そういう声が聞こえてしまうのは仕方がないのだろうが、キャッチャーがインコースに寄りました、アウトコースに寄りました、ウエストで腰を浮かせました、というような試合の行方に少しでも影響を与えるような声が聞こえるのはまずいのではないか。何も、これはうちだけでなく、相手も同じ”裏表”のことなんだけどね」 そもそもキャッチャーのポジションやミットの構えが判明することが、そこまで試合に影響を与えるのだろうか。