なぜRIZINで那須川天心の究極キックボクシングに完敗した皇治は「武尊の方が(天心より)強い」と爆弾発言を行ったのか?
ダウンシーンは一度もなく、倒せなかった。だが、判定結果を聞くまでもなかった。ジャッジは3者共に30-27のフルマークで天心を支持した。 試合後、すぐに会見場に現れた天心は綺麗な顔をしていた。 「何もさせなかった。何ももらわないで痛めつけた。試合にならなかった試合だったと思う。これが格闘技ですよ」 戦前は勝ち負けではなく天心が何秒でどんな形で皇治を倒すかが、焦点だった。それだけにネット上では、ダウンをせずKO負けを回避した皇治の健闘を称える声が少なくなかった。天心も「悔いのない試合はない。倒したかった」と言い「体重差はある。でかいなと思った。打たれ強さには、そこの差もあった」と分析した。今回は、2人の階級の間を取り58.5キロの契約だったが、本来、階級が上の皇治は、計量後のリカバリーで当日のリングに65キロで上がっていた。 この体重差がKO決着をできなかった障害になった可能性もある。だが、天心は、そもそもの「倒す、倒さない」の論調に異議を唱えた。 「立っているだけで、すげえ、というのは違う。試合前から、倒すか、倒さないでは試合が成立していない。そこに腹が立っていた。格闘技の本質を思い出して欲しい。盛り上げることも大事だが、それだけじゃダメ。今回の試合でわかったと思う。会場はシーンとしていた。絶望を与えよう、それがテーマだった。皆さんは、皇治さんに希望を持っていた。でも、そうじゃない。温度差をしっかりと見せつけたいと思って試合した。圧倒的に相手のいいところをひとつも見せない。そこは出せた」 神童と呼ばれ、ホームグラウンドのRISE、そしてRIZINのエースとして、フロイド・メイウエザーとのエキシビションマッチ以外で、無敗を誇る天心の誇りである。だから、執拗な皇治の挑発にむかつき、試合直後に「なめんなよ」の一言が思わず漏れた。ただ倒せなかったことが話題になるのは、天心の最強を証明する名誉なことだろう。 KO決着がなくとも、9分間、緊迫感のある戦いでファンの目を釘付けにしたファイトは、名勝負と呼んでいい。これぞプロ格闘技である。 皇治は天心を何ひとつ驚かすこともできなかったが、”言うだけ番長”ではなかったことも事実。