100万人近くが集まる佐賀の「バルーンフェスタ」!知られざる大イベントを久住昌之が見に行ったら、とにかくヤキモキして…
◆夜間係留イベント開催 しかし、あたりが暗くなる頃には、いつの間にかほとんどの気球が立ち上がっていた。 すごい数だ。それらが時々バーナーで内側から光る。すごくカラフルで美しい。 色も様々だが、パンダの形の気球や、タコの形の気球もある。いったい気球はいくつあるんだろう。広範囲にすごい数立ち上がってきた。 やった、これはたぶん、夜間係留イベント開催ということだ! 帰らなくてよかった。 しかしこの時点でも、「夜間係留イベント、開催です!」とか、ハッキリした開始の言葉はない。少なくともボクにはわからなかった。なんとなーく、始まっている、ようだなー、という感じ。 いや、これは始まっている。自分でそう納得するしかない。いや少なくとも眼前は、現実に素晴らしい光景になっているのだ。いつの間にか。 よーし、とあらためて気球群がよく見える場所を探し、土手の草斜面に腰を下ろす。 なにしろ座席とか観客席の区切りなんて何もない。大きな花火大会より全然いい加減だ。 ロックバンドの生演奏が始まり、アナウンスの女の子が甲高い声でいろいろ捲し立てたあと、一段と高い声で、「3、2、1、バーナーズ、オーーーーン!」と叫んだ。 するとそれに応えて、全機が一斉に内なる炎でライトアップされた。 うわあ、大迫力だ。これは美しい! さすがに群衆もどよめいた。 そして振り返るとその光が、土手の何万人か何十万人の顔を赤く照らしている。すごい光景だ。そのうちバーナーは、全体にだんだん暗くなっていく。 すると例のアナウンス女子が、再び、「3、2、1、バーナーズ、オーーーン!」と甲高く叫び、また全員がバーナーを点けた。
◆いつまでも続く「バーナーズオン」 このバーナーズオンは、音楽に合わせ、間隔を少し置いて、いつまでもいつまでも続いた。ワンパターンの繰り返しっちゃ繰り返しなんだが、ブツは馬鹿でかいし、その数も範囲もただ事ではない。そう簡単に見飽きることはない。河川敷という広大な夜景に、ものすごく映える。 なるほど、夜間係留イベントとは、こういうものだったのか。 からだが冷えるまで見ていたが、なんとなく帰る人が増えてきたので、その群衆に混じって、佐賀のビジネスホテルに帰ることにした。イベントのラストがどうなったんだか知らない。 駅は大混雑、列車も二駅ぎゅうぎゅう詰めだった。 明日も天気は良さそうだ。早朝からの本番に向け、セブンイレブンでビールとか買って、宿の部屋で飲んで早く寝た。 明かりを消してベッドに入っても、耳の中で「3、2、1、バーナーズ、オーン!」がいつまでも鳴っていて、少しウザかった。 ※本稿は、『新・佐賀漫遊記』(産業編集センター)の一部を再編集したものです。
久住昌之