川崎に新星現る…久保建英と同期FW宮城天が待望のJ初ゴール
東京五輪後に再開された明治安田生命J1リーグで今シーズン初黒星を喫するなど、独走ペースに陰りが見えかけていた王者・川崎フロンターレに救世主が降臨した。 敵地・県立カシマサッカースタジアムで鹿島アントラーズと対峙した、22日の第32節の後半アディショナルタイムに、アカデミー出身の20歳、FW宮城天が出場8試合目にして待望のJ1初ゴールをゲット。川崎を2-1の逆転勝利に導いた。 日本代表MF久保建英(20・マジョルカ)と同じ2001年生まれで、小学生年代には川崎フロンターレU-10でともにプレーした宮城はペナルティーエリア右角の後方、約20mの距離から豪快な無回転ミドルを一閃。プロ2年目の俊英が放ったまばゆい輝きが、試合がなかった2位の横浜F・マリノスとの勝ち点差を7ポイントに広げた。
「普通に打っても入らないから無回転を狙った」
ボールをもらえばどのような状況でも、迷わずにシュートを打とうと決めていた。ゴールへの角度次第では日々の練習で身につけた、相手のデータにはない武器も上乗せする。思い切りのよさとたゆまぬ努力が、宮城に歓喜の瞬間をもたらした。 ドラマチックなシーンは守護神、チョン・ソンリョンのロングキックから始まった。こぼれ球をMF脇坂泰斗がワンタッチで、途中出場していた宮城へまずはたいた。 「最初のシュートで入っちゃうかな、と思ったんですけど。実際には入らなかったけど、ちょっといいイメージがあったので」 ゴール正面から放った宮城のシュートはDF町田浩樹にブロックされ、右サイドにいたFW家長昭博の前へこぼれる。家長が後方のDF山根視来へボールを落とす間に、ペナルティーエリア右角の後方にポジションを移した宮城はこんな絵を抱いていた。 「ミキくん(山根)から僕にボールが入ったんですけど、その前から『パスをもらったらシュートを打とうかな』と漠然と考えていたので」 直前に放ったシュートの感触のよさが、心のなかで「よし、もう一本」と叫ばせた。しかもこの瞬間、宮城の左右にいたMFディエゴ・ピトゥカとMFアルトゥール・カイキ、前方にいた町田とDF永戸勝也がなぜか一瞬だけ棒立ちになった。 大きなスペースと自由を与えられた状況下で、シュート以外の選択肢を持たなかった宮城は約20m先に見える、相手ゴールまでの筋道を冷静沈着に計算していた。 主戦場としている左サイドならば、カットインから利き足の右足を振り抜いて巻いた軌道のシュートを打てる。しかし、いまは角度的にも同じアプローチは難しい。 「なので無回転を狙いました。右から普通に打っても入らないので。ボールの芯をとらえるシュートをいつも練習していたので、ああいうところで練習の形が出たのかな、と」 リラックスしたフォームから芯を正確無比に打ち抜かれた無回転のボールは、空気の抵抗を受けながら大きくぶれて飛んでいく。鹿島の守護神、沖悠哉が必死に右へダイブしたが、決勝弾はゴールの真ん中から左寄りのネットに突き刺さった。