至高のヒレのしゃぶしゃぶが待っている。牛肉の老舗「銀座吉澤」が圧巻のリニューアル
さて、25,000円のフルコースでは、ヒレ肉をしゃぶしゃぶと網焼き、2つの食べ方で提供。しゃぶしゃぶは、カウンターの目の前で、金村料理長が直々に調理。丁寧にとったコンソメスープに、やや厚めにスライスしたヒレ肉をさっと潜らせ、ほんのりと赤身が残る絶妙のタイミングで火を入れる。
鍋のコンソメは、材料は同じでも最初と違い、今度は約3時間じっくりと煮込んでとるオーソドックスなスタイル。淡い黄金色のスープに揺蕩うように浮かぶヒレ肉は、見るからにしっとりと美しい。特製の胡麻酢タレもあるが、まずはそのまま口に運べば、コンソメの香りと共に和牛ならではの風味が品よく広がる。
予想を裏切らぬたおやかな舌触りの中、滋味豊かな肉汁がじんわりと味蕾に染み通る。派手ではないが、後を引くうまさだ。
しゃぶしゃぶが“静”のうまさなら、網焼きは躍動的。分厚くカットしたヒレ肉にタレを絡めつつ、炭火でじっくりと焼き上げていくわけだが、焼くほどに漂う、甘やかにして香ばしい香りが陰の立役者。食欲を一層刺激するはずだ。
その後、マクラ(にのうで)と冬瓜、長茄子の抱き合わせが出て真打登場。「銀座吉澤」の看板料理の一つ“すき焼き”の出番だ。
肉は堀井牧場の松阪牛。肥育日数33カ月の処女牛だ。霜降りも見事な肉は小豆色。融点が低いからだろうか、脂は軽くすんなりと胃の腑に収まる。
途中で「雲丹の大葉包み揚げ」(フルコースのみ)、海鮮と和牛のユッケをのせた「小丼」など魚介が多少出るものの、ほぼ肉尽くしのコースの締めは、シンプルに「とうもろこしの炊き込みご飯」。
しかし、そこは肉割烹、鰹だしではなくコンソメで米を炊いている。目には見えずとも、実は肉のエキスがたっぷりという演出も心憎い。その分、炊き込む具は季節野菜1種類に絞っているそうだ。
コースを食べ終わる頃には、お肉を食べた!という充足感に満たされているはず。それも、コースで供される牛肉の総量は約220~230gと聞けば納得。和牛の真骨頂を味わいたい。