至高のヒレのしゃぶしゃぶが待っている。牛肉の老舗「銀座吉澤」が圧巻のリニューアル
エレベーターを降りれば、そこは上質な和の空間。大谷石を敷き詰めた床に見事な組子細工の照明が印象的な店内は、こぢんまりとしていながらものどやかな雰囲気が漂う。樹齢100年余りという天竜檜の一枚板を用いたカウンター6席はオープンキッチン。臨場感もたっぷりだ。
カウンターに立つのは「山の上ホテル」で和食副料理長の経験を持つ金村直樹料理長。和食一筋二十有余年のベテランだ。だが、魚に比べて肉を扱う機会が少ない和食のこと。今回「銀座吉澤」の厨房に立ち、改めて牛肉の奥深さを知ったそうで、曰く「牛肉は、魚と違って一頭のパーツが多いというか……。一つの個体の中でもさまざまな部位があるんですね。更に一つの部位、例えばもも肉一つとっても、内もも、外もも、シンタマ、ランプに分かれるわけで、もっと言えばシンタマにしても、カメノコ、トモサンカクと細分化されます。それぞれに味わいや脂のつき方、食感も異なるので、それぞれの特徴をどう生かして料理に仕上げるか、いろいろと勉強になりますね」。
和の手練れであっても、「肉は初心者」と語る金村シェフの強力な助っ人が、統括アドバイザー兼エグゼクティブシェフの椎名豊太郎氏。あの「NARISAWA」での修業経験を持ち、現在はスーパーバイザーの仕事を中心に活動している椎名氏、今回の肉割烹のコースでも、和をベースに洋のエッセンスを加味、アイデアを存分に発揮している。
ちなみに、コースは先附からデザートまで全11品のフルコース25,000円と、品数を2品少なくしたショートコース18,000円、土曜日限定の肉尽くしコース15,000円の3タイプを用意。お腹の容量に合わせて選べるのも気が利いている。
席に着くと、最初に登場するのが引きたてのコンソメスープだ。ゲストの来店時間に合わせ、牛スネ肉のミンチと香味野菜が入った耐熱ガラスの鍋をアルコールランプにかけて煮沸すること約30分。ゲストが到着する頃には、引きたてのコンソメスープが出来上がっているというわけだ。馥郁とした香りを湛えるこのスープがコースの幕開け。それも「牛の問屋ならではの贅沢な引き方をしたコンソメで、その醍醐味を感じてほしい」(椎名氏)との思いゆえだ。