地球外生命を探して -太陽系の“三大名所“をめぐる 3.タイタン
日本科学未来館で2015年1月11日に行われた、サイエンティスト・トーク「地球外生命を探して -太陽系の"三大名所"をめぐる科学の旅」の全文書き起こしをお届けします。 土星の衛星「エンケラドゥス」に生命が存在できる環境の海があることを明らかにした、関根康人氏(東京大学准教授)によるトークイベントです。本イベントでは、天体や宇宙の構造を自由に眺めることができるソフト「Mitaka」(提供:国立天文台4D2Uプロジェクト)を大画面に上映。関根氏のガイドによるバーチャル宇宙旅行で、3タイプの「生命がいるかもしれない天体」をめぐりました。 第3部は、水以外の液体が豊富に存在する「タイタン」です。動画はページ内のプレイヤーでご覧いただけます(32分50秒~1時間22秒)。 *第1部は、過去に表面に水があったと考えられる「火星」 *第2部は、星の内部に海があると考えられる「エンケラドゥス」 ---------------- 谷:さあ次の星はどの辺りにあるんでしょうか。 関根:次の星は、このエンケラドゥスの実はすごく近所で、土星の月の1つのタイタンっていう星に行ってみようと思います。 谷:もう1つ、土星の別の月ですね。はい、こちらにターゲットを合わせます。そして近づいて行きます。 関根:さっきお話ししたのは、地下に海があるエンケラドゥスの話をしましたが、タイタンは答えを先に言いますけど、地球以外で、太陽系で唯一今でも地表に液体の海を持っている天体です。この、赤っぽい、オレンジ色をした星です。ちょっとじゃあ、タイタンに行ってみようと思います。 谷:じゃあ、着陸機を飛ばしてみる感じですかね。 関根:はい。タイタン自体は、ここに書いてあるとおり2005年の1月14日。今からちょうど10年前ですね。 谷:ちょうど10年前なんですね。今年2015年。 関根:私、ちょうどこのときにNASAのエイムズ研究所というところにいて、このカッシーニの探査に関わる研究をしていて、個人的には思い入れのある天体なんですけれど、まさか今もう、10年たっているとは思わなかったですね。この前、前列の小学生の皆さんなんて生まれてないですよね。 さっきお話ししたカッシーニ・ホイヘンスという探査ですが、この中でホイヘンスっていう小型の着陸探査機を、タイタンの地表に着陸させました。この画像は何かっていうと、着陸時の画像、そのホイヘンスがタイタンに降りながら撮ってった実際の画像を、コンピューターグラフィックスでつないで、さも自分がタイタンに着陸しているかのようにつなげた動画です。 さあ、タイタンの中に入っていきますね。オレンジ色ですよね。なんでこんなもやもやしているかというと、タイタンに大気があります。地球と同じぐらいの大気圧があって、そうこうしているうちに、もやの下に地表が見えてきました。もやはある種、雲みたいなものだと思ってください。その下に地表が見えてきて、今、右下にあるのがだいたい高度50キロぐらいの高さです。 よく見ると、この色のちょっと白っぽいところと、ちょっと黒っぽいところがあるのが分かると思います。特にあそこには白い部分には川のような跡があります。分かります? ここも川の跡。 谷:何か流れたような跡に見えますね。 関根:ありますね。で、あとで分かったんですけど、画像の全体がかつて巨大な川だったです。アマゾン川みたいな、昔、大きな川だった。今は乾いていて液体は流れていないんですけど昔、巨大な川で、そこに注ぎ込むような小さい支流の川もたくさんあることが分かりました。画像でみえる白と黒っぽい物質ですね。ホイヘンスは黒っぽい地表に着陸しました。これ、昔の河原だったところに、ホイヘンス機は着陸しました。降りていく途中にも、白く見える地表の成分や、黒っぽく見える成分もそれぞれ調べていったわけです。 谷:はい、いよいよ着陸しましたね。 関根:この白い部分、何かというと、大部分が水の氷です。タイタンはエンケラドゥスと同じような氷の月です。その地表に大気があって、大気があるため分かりづらいんですけど、白い部分は氷でできていて、高度が高い高地になっています。この、黒っぽい部分は何かっていうと、大気中にただよっていたもやを作っていた有機物の微粒子が地表に降り積もったものだと考えられています。これら有機物の微粒子は、川に集められてそれで泥みたいな形で低地を埋めて黒っぽい地表になっています。 地球では岩石の山があって、それが水の作用で浸食されて細かくなった泥があるわけなんですけど、タイタンでは、氷の大地があって、有機物の泥があるということです。