地球外生命を探して -太陽系の“三大名所“をめぐる 3.タイタン
これはさっきお話しした、ホイヘンスが着陸したところの写真です。左側が上から降りていきながら地表を見た写真で、川のような地形と、あとは雲も写っています。右側は、着陸した場所のズームアップで、丸い小さい石みたいのが見えますよね。この丸い石は実は、岩石の石じゃなくて氷です。氷の塊で、氷の大地が何かしらの液体で削られて、ころころ転がってくる間に丸くなって角が取れて、それで地球の河原みたいに川の底にたまっています。さらに右側の写真は地球の河原の丸い石です。この丸い石を見ると、何か水が昔流れたんだなって思うかもしれませんが、同じような液体による浸食がタイタンにあったんです。ただ物質は違うわけです。地球の場合は岩石の石。ただタイタンの場合は氷でできた地表です。 じゃあ、その液体がなんなのかというのは皆さんちょっと気になるかもしれないです。タイタンの地表の温度はマイナス180度ぐらい。つまり、液体の水は存在することはできません。ただ、タイタンの大気にメタンが含まれています。で、このメタンは地球上では主にガスなんですけれど、マイナス180度のタイタンでは、凝縮して液体になって地表に存在するのです。 実際着陸した地点には液体は乾いていたんですけど、カッシーニ探査機がタイタンをくまなく調べると、タイタンの上にはこの右の絵のような、巨大な海みたいな、液体のたまっている場所もあったり、あとは湖の小さいのがたくさんあるような場所も見付かりました。 谷:こちらも動画を用意しているんですよね。 関根:はい。 谷:では、再生していきます。
関根:これは、タイタンの北極辺りに存在している液体のメタンでできた湖と海の写真です。湖に注ぎ込んでいる小さい川みたいのも見ることができるかと思います。だいたい大きさがどれくらいかというと、地球の北米の五大湖とだいたい同じくらいの大きさです。だから、地球上であったら湖と呼ばれるんですけど、タイタンは地球よりも大きさが小さいのでこの程度の大きさでも海と呼ばれています。こういう液体がタイタンの地表には今、現在でも存在しているといます。 谷:今も液体があるということですね。湖とかがあるということです。はい。そして、では次に行きますと、では果たして液体があるといっても水ではありませんでした。そして、とっても冷たいところなんですけれども、本当に生命っていうのがいるんでしょうかということになってきますね。 関根:はい。液体の重要な点は、その中にたくさんものを溶かし込んで、中で化学反応を起こすことができるっていうことです。われわれの体を作っている物質も、水に溶けているものから取り込んで、自分の体を作っていっているわけです。 タイタンの場合、同じような化学反応が起きうるのかどうか。で、この左の絵はわれわれの実験室で行った実験を示していて、実験室の中にタイタンの大気と同じような環境を作る装置です。タイタンの大気っていうのは、窒素とメタンでできていますけど、その窒素とメタンのガスを用意して、そこに太陽の光みたいな光を照射していきます。すると、右の写真みたいな、オレンジ色の有機物の微粒子ができます。これがタイタンがオレンジに見えていた理由で、大気中でこういうオレンジの有機物の微粒子がたくさんできて、それが大気にたくさん漂っているので、タイタンがオレンジに見えていたわけです。そして、これらは地表に降り積もって、ホイヘンスの降下時の写真に見えていた、黒っぽい泥状の地面をつくったりします。 このできたオレンジのものを、いろんな分析をすると、実は中にわれわれの体を作っているアミノ酸の成分に近いものであるとか、あとはDNAの素になっている核酸の一部もこの中に含まれていることが分かってきました。なので、生命を作っている部品、部品が、タイタンの大気の上のほうで、化学工場みたいな形でどんどん作られているってことが分かってきたわけです。 これがタイタンの上のほうでできてどうなるかっていうと、最後は地表に集めていきます。集まっていきます。その地表では、メタンが流れて川をつくっているので、そういうところでどんどん湖に掃き集められて最終的には湖の中にものすごく濃集した有機物のスープみたいなものができます。そういう中で、さらなる化学反応が進んで、生命が誕生するかどうかは分かりませんが、とにかく非常に大きな化合物は、タイタンの中でできているってことが今、分かってきています。