【函館2歳S回顧】心身ともに規格外のサトノカルナバル 前走と真逆の適性差を埋めた対応力
レース史上初、北海道デビュー馬以外の勝利
世代最初の重賞は一番星を決する舞台。求められるのはスピードと完成度であり、いわゆる速攻型にとって大きな目標となる。裏を返せば、将来性というフレーズは必ずしもコンセプトに入ってこない。たとえ伸びしろを期待しても、その後は思うように結果を残せない。これも世代一番星の宿命といえる。 【函館記念2024 推奨馬】複勝率81.2%で安定感が光る!複数の好データにも該当 SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) そんな函館2歳Sのイメージにはまらないスケール感がサトノカルナバルにはある。つまり、例年の函館2歳チャンピオンとはひと味違い、将来性を感じさせる。まず、函館2歳S史上、勝ち馬の前走が札幌、函館以外だったのはサトノカルナバルが初めて。一般的には函館デビュー、滞在調整から重賞へ。まだ競馬に慣れていない若駒にとって環境が変わらず、同じコースで続けて走るアドバンテージは大きい。 それを跳ねのけたサトノカルナバルは2歳とは思えない精神面の強さがある。新馬勝ちは東京最終週。そこから中2週。いかにレース後にダメージが少なく、北海道へスムーズに輸送できたかが知れる。レース10日後、7月3日に美浦坂路で軽く時計を出し、北上。最終追い切りは函館とスケジュールには決して余裕があったわけではない。それでも馬体重は2キロ増の496キロ。出走中2番目に重く、2歳離れした雄大な馬体もこのローテを可能にした。心も体も2歳の範疇を超えている。これを完成度ともとれるが、やはり将来性への期待が大きい。
全兄ジャスティンスカイのようにマイルまで
東京の新馬戦は1400mで序盤600m36.5のスロー。中盤で12.8までラップが落ちたが、遅い流れでもリズムを乱さず、しっかり脚を溜め、後半600m11.6-11.1-11.6の34.3を余裕の手ごたえで乗り切って7馬身差。函館2歳Sは1200m戦らしく対照的なラップ構成になり、前後半600m34.0-35.2。馬場の重さも正反対の状況で、前走から2秒5も速い流れにも動じなかった。古馬でさえ戸惑うほどの適性の差を上手に走って埋めた。いったいどちらに適性があるのか分からない。これもまた底知れぬ魅力といえる。 今年の函館は天候に恵まれ、決着時計1:09.2は16年レヴァンテライオン、19年ビアンフェと並ぶ函館2歳Sレコード。函館としては速い時計になり、例年より軽さが必要だったのも東京芝1400mを勝ったサトノカルナバルに向いた。本質は広いコースの高速決着向きではないか。同血の兄ジャスティンスカイは3歳2月までに2勝をあげ、その後はマイル路線に矛先を変えて3連勝。さらに距離を縮めて、5歳春にはじめてスプリント戦に出走し、オープン勝ちを決めた。対応力の高さはこの血統特有で530キロ超の兄に似ている。ということは、決して1200mが限界のスプリンターではない。マイルまでは楽しめるので、秋以降の2歳戦線でも引き続き注目しよう。