高齢化進む団地の商店街を大規模リノベ! 名物・商店街バーガー、駄菓子屋など新店も続々、子どもも高齢者も街歩きを楽しみだした 千葉県千葉市「花見川団地」
商店街の意見を反映、同時に住民や学生を巻き込む「ソフト」の仕掛け
「まず、屋外のリノベについては、商店街の方に要望をお聞きしました。座る場所がほしい、芝生があるといい、遊べる場所がほしいという声がありました。特に住民にご高齢の方が増えたので、お買い物の合間に座る場所がほしい、おしゃべりできる場所があったらという要望が多かったですね」(濱口さん)
UR都市機構は施主であり事業主体ではありますが、実施設計、プランニングにおいては株式会社MUJI HOUSE(良品計画の子会社、住空間事業を担う一級建築士事務所)に一任し、現場の意見を尊重するというスタンスをとっています。このあたり、10年以上、団地を再生させてきた信頼感があるからこそなのでしょう。
「座る場所がある」リノベプランとしてMUJI HOUSEから提案されたのは、ただ「椅子がある座る空間」ではなく、テレワークをしたり、おしゃべりしたり、カフェのように「滞在できるような場所」です。同時に商店街に設置されていたアーケードを撤去し、空が見えるようデザインし直し、日差し対策としてオーニングを取り付けるなどし雨の日も気軽に歩ける便利さは残しました。これにより花見川団地のシンボルでもある給水塔がはっきりと見えるようになったほか、明るい色に塗り直した団地外観が映えています。大きな変化はないのに、団地そのもののよさが際立つデザインとなっているのは、さすがといえるでしょう。
階段室の入口。入口上部に書かれた部屋番号もおしゃれ。
人が戻ってくるカギになったのはMUJI HOUSEに所属する傍ら、商店街で「ミトーリ工房」を営む、見通真次(みとおり・しんじ)さんの存在です。リノベーションプランというハード面だけでなく、住む人たちのコミュニティをまとめていく「ソフト面」で中心的な役割を果たしました。 「花見川団地に初めて来たのは2021年。人がロードサイドの店舗に流れてしまい、商店街にシャッターが下りている、そんな印象でした。元気なお店はあるんですが、4割近くが空き店舗になっているとどうしてもシャッターが目立ってしまう。ただ、実際に商店街の方と話してみると、みなさんここで50年ほど商いをなさっていて、地元への思いが強いんです。だからこのままではよくない、何かやらないといけない、みたいなマインドがありました。だから自分やMUJI HOUSEが独断で進めるのではなくて、今あるこの商店街のものを生かしながら、『編集』という視点で集客をしようと考えていました」と見通さん。 見通さんは当初、ここに通勤してプロジェクトに携わっていましたが、2022年7月から花見川団地にご家族とともに転居してきました。住まいになっているのは、いわゆる店舗付き住宅。1階が商店、2階が住居という住まいで、自身でDIYしてお店をつくっていきました。 「DIYで作業をしていると、フルーツやドリンク、パンの差し入れをもらって。がんばっているね、という声をかけてもらいました。あわせて月1回のワークショップ、3カ月に一度のイベントを行って、みなさんに必要な空間とはどんなものか、ソフト面では何ができるのかを探っていきました」(見通さん)