放置森林は燃やして稼ぐ。西伊豆発循環モデル、次なるピースは「うまい」薪火レストラン
でもそれが今はまったく生かされていない。時代の流れとはいえ、先人たちの営みを無視するかのように、アクセスの悪いこの土地に海外からせっせと化石燃料を運んでいる。そのエネルギーは、正直無駄が多すぎます。 そんなことをしなくても、近くの山には大量に使われていない森林資源があります。燃やした方が良いものは燃やして、地域内で資源を消費し、しっかりと経済を「まわす」。そういう自立的なあり方を今こそ実践すべきなのではないかと思っているんです。
海と山のつながりを知る
── 地域経済を「まわす」観点では、潤一郎さんは古道を使ったマウンテンバイクツアーやカヤックフィッシングなど、山と海のアクティビティを事業として精力的に展開されています。これらはどのような思いで始められたものなのでしょうか? まずマウンテンバイクのツアーですが、移住してすぐ地元の方から、西伊豆には炭焼きの炭を運び出すための「古道」がたくさんあったという話を聞いたんです。文献を当たったり、専門家に話を聞いたところ、この道は1200年前から存在していることが分かりました。 ── そういった道は珍しいのでしょうか? これまで東南アジアや南米を中心に、世界中あちこちの山を訪れてきましたが、このような道は見たことありませんでしたね。同じ道でも、ヒマラヤのトレイルは年間数十万人も訪れる観光資源。この道だって直したら面白いことになる可能性はあると思ったんです。 とはいえ、整備をする最初の動機は、僕自身がこの珍しい道でマウンテンバイクを楽しみたかったから。地元の林業事業体に参加して木を切る技術を学びながら、少しずつ整備を進めていきました。そのうち森の中に日が入るようになり、ウサギやネズミなどが棲みつき、それを狙う猛禽類も来るようになりました。 切り出した木を使って宿をつくったり、それを燃料に利用したりといった循環的な考え方は、西伊豆の自然とさまざまなかたちで接続しているうちに、進んでいった気がします。 ── ご自身が遊ぶために着目された地域資源だったというのは意外でした。 カヤックフィッシングも似たようなところがあります。もともとは2020年に、コロナの影響で収入が0になったのを期に、家族で自給自足を目指して始めたものでした。