放置森林は燃やして稼ぐ。西伊豆発循環モデル、次なるピースは「うまい」薪火レストラン
── ウッドボイラーと太陽光集熱器。あまり聞き慣れないものですが、どういうものなんですか? ウッドボイラーは、薪を燃料とする給湯・暖房システムのこと。燃焼室で薪を燃やし、その熱を利用して、貯湯タンクの水を調熱したり、暖房器具にエネルギーを送るような仕組みになっています。
太陽光集熱器はその名の通り、太陽光を集めて熱として利用するための装置です。この集熱器を建屋に設置し、日中は太陽光、夕方からはウッドボイラーと熱源を切り替えることで、効率的にエネルギーを使えるようになりました。 ウッドボイラーに使っている薪は、森林整備で出た未利用木材なので、ほとんど原価はかかっていません。以前はガス代が毎月15~20万円程かかっていたんですが、今では最大8000円くらいになりましたね。
せっせと化石燃料を運んでこなくてもいい
── 未利用木材というのはそんなにたくさんあるものなんですか? 伊豆の全家庭がウッドボイラーを導入してもまかなえるくらいの量はあると思います。伊豆半島は、古くから広葉樹林帯が豊富な土地で、江戸時代から昭和初期にかけては、炭焼き(木炭づくり)が地域経済を支えていました。 しかし、石油や電力へのエネルギー転換を期に木炭の需要が減り、山に木が放置されるようになったんです。 ── それがどう問題になるのでしょうか? 森林を放置すると、木が大きくなりすぎて日光が地面に届かなくなります。これによって山は保水力を失い、生き物の多様性にも影響が出る。それに加えて、間伐などで切られた木も放置されると腐り、その過程でCO2やメタンガスを排出します。 木を燃やしてもCO2は出ますが、これは木が成長する過程で吸収したもの。放置して腐らせるより断然環境にいい。山を健康的に循環させるためには、定期的に木を間引く必要があり、ウッドボイラーはそうした間伐材を利活用できるんです。 ── ありのままの自然を残すことが、今の地球環境にとって必ずしもいいわけではないと。 西伊豆は暖かくて雨が少なく、雪もほとんど降らないので、木が育ちやすい環境です。こういった場所では特に、人が適切に森林を管理する必要があります。 明治時代の西伊豆は、のちの国鉄総裁や国会議員を輩出するほど教育水準が高く、経済的にも豊かな地域でした。岩盤が分厚く電車も通せない辺鄙なところでも発展できたのは、炭焼きの産業があったから。元を辿ればすべてはあの広葉樹のおかげと言ってもいいでしょう。