放置森林は燃やして稼ぐ。西伊豆発循環モデル、次なるピースは「うまい」薪火レストラン
松本潤一郎(まつもと・じゅんいちろう) 1982年生まれ。BASE TRES代表取締役。自伐木材リノベーションの宿「LODGE MONDO -聞土-」オーナー。再生「古道」を活用した「YAMABUSHI TRAIL TOUR」、西伊豆の海の魅力を伝える「カヤックフィッシングツアー」を展開中。2022年、環境省グッドライフアワード森里川海賞を受賞。4児の父。
曲がった木しか使いたくない
── いろんな取り組みをされていると思うのですが、まずは潤一郎さんが運営しているこの宿、ロッジモンドについて教えてください。 ロッジモンドは廃業したペンションをセルフリノベーションして立ち上げた宿です。僕は西伊豆の森林整備もしてるので、内装に使っている木材はそのほとんどが仲間たちと伐採した広葉樹。このダイニングルームに張り合わせてある木を見てもらえば分かるんですが、曲がった木しか使いたくないんです。だからランダムに切って、耳を揃えずにそのまま使っていて。 ── なんで曲がった木しか使いたくないんですか? そういう木に囲まれている方が落ち着くんです。僕自身が曲がった木みたいなものだから。 僕、幼稚園を入園して数ヶ月で中退しているんですよね。幼稚園にはお昼寝の時間があるじゃないですか。でも、「なんで眠くもないのにみんなで寝なくちゃいけないだろう」って。何かにつけて、揃えて、一つの方向に向かわせようとすることに、幼いながらに違和感があったんです。 日本の公教育は、人工林だと感じています。出来損ないは間伐されるし、枝打ちされる。「曲がったもの」をよしとせず、せっかくある木の動きを無視して均一な板に加工する。本来あるはずの個性を平気で平準化する......そういうのってどうなんですかね。 こういう性格もあって、人と群れなくても生きていける力を身につけたいと思っていきました。
── 「多様性」のテーマにもつながる示唆的なお話ですね......。 僕の祖父母は熊本の阿蘇・外輪山に住んでいて、彼らはまさしく自立して生きている人たちでした。周囲数キロくらい何もない場所をクワ一つで開墾して、家を建て、牛飼いをやりながら、うまい米と野菜をつくって、自分の土地で育てた木を燃料にしていた。ほんとにすげえじいちゃんばあちゃんで、小さい頃から憧れの存在でした。 2年前ロッジモンドに、ウッドボイラーと太陽光集熱器のハイブリッドシステムを構築したのは、そういう生活を見ていたことも影響していると思います。ちょうどウクライナの戦争が始まってガス代が高騰していたときですね。