米雇用統計、しつこい賃金インフレ 年明け以降の利上げ幅縮小は不透明に?
11月の米雇用統計は評価の難しいものだったと、第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストはいいます。今後のFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げペースはどうなるのでしょうか。 【グラフ】コロナ禍に円安…でも意外に悪くない? 日本経済と日本株
「判断に困る」11月の米雇用統計
12月2日に発表された11月米雇用統計は、米経済が明確に減速しているにもかかわらず、労働需給が逼迫し賃金上昇圧力がなお強く残存していることを浮き彫りにしました。すなわち労働参加率(16歳以上の人口に占める働く意識のある人の割合)が停滞する下で、雇用者数の増加は続き、平均時給が再加速するという何とも判断に困る内容でした。 非農業部門の雇用者数は前月比+26.3万人と市場予想(+20.0万人)を小幅に上回り、3カ月平均では+27.2万人となりました。個人消費の減速を受けて小売(▲3.0万人)と運輸(▲1.5万人)において大規模な人員削減があったと推察される一方、レジャー・ホスピタリティ(宿泊・飲食業、+8.8万人)と教育(+8.2万人)の採用意欲は依然として旺盛で、全体としてみれば労働需要はなお底堅いと判断される結果になりました。 失業率は3.7%(3.68%→3.65%)で不変でした。9月の3.5%から小幅に上昇しているものの、依然として歴史的な低水準に留まっています。また失業者を広義の尺度で捉えて算出するU6失業率(フルタイムの職が見つからず止む無くパートタイム勤務に従事している人を失業者と見なす)は6.7%へと低下し、過去最低付近を維持しました。 なお過去数カ月、失業率の算出などに用いられる「家計調査」と雇用者数や平均時給の集計に用いられる「事業者調査」で数値が大きく異なっていることに注意が必要です。家計調査でみると11月の就業者数は▲13.8万人となっており、いわゆる雇用統計のヘッドラインとされる雇用者数とは乖離が生じています(=事業所調査の強さが誇張されている可能性があります)。