物語を作ることに僕自身が救われている――劇団ひとりが語る、お笑い、開会式、家族、そして小説
ピン芸人として数々のテレビ番組に出演する一方、ベストセラーになった『陰日向に咲く』などの小説を書き、ビートたけしの自伝を映画化した『浅草キッド』の監督・脚本を担当するなど、クリエーターとしても活躍する劇団ひとり(45)。2021年以降は、『浅草キッド』の公開、東京オリンピック開会式への出演、さらに12年ぶりの小説『浅草ルンタッタ』の上梓と、めまぐるしい日々を過ごしている。芸人、クリエーター、そして家庭人という三つの顔について、どうバランスをとっているのだろうか。(撮影:池村隆司/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
五輪開会式前はリスクにドキドキした
2021年の東京オリンピックの開会式は、関係者の過去の言動が掘り起こされる「キャンセルカルチャー」の修羅場となった。そんな開会式に出演した一人が、ピン芸人の劇団ひとり。怖くなかったのかと聞くと、仕事を受けた時点では特に気にしていなかったと語る。 「僕が撮った後ですから、いろいろリスクが発生したのは。ドキドキしましたけどもね、無事に何もなかったんで」 とはいえ、自身の過去のネタは気になったという。 「事務所の人間と、『そうですねー、これは俺もダメかもしれないな。まずあのネタですよね、このネタですよね、あのネタも言われようによっては……』なんて言って。だけど蓋を開けたら、そんなに大したことなく」
劇団ひとりも、現在はポリコレ(ポリティカルコレクトネス=政治的・社会的に公正で中立的な表現をすること)を意識しているという。 「頑張ってます、怒られないようにね。『今、本当はこう思ってるけど、こんなこと言うと、なんて言われるかわからないな』っていうことは、すごく意識してます。ゴリゴリのお笑いじゃない番組にもいっぱい出てるんで、そこらへんで問題を起こして、自分に足を引っ張られるのが嫌なんですね。勝負するべきところじゃないところで失言をして、自分のやりたいことに影響を及ぼすのが嫌なので、やりたいことに迷惑がかからないようにはしてますけどね」 若手に対しても、こう心を配る。 「今、お笑いを始める子はしんどいだろうなとは思いますよね。うまく怒られないようにバランスとって、それでいて面白くっていうね。そういうふうに、どんどんプロ化していくんだろうなって感じがしますね」