ノーベル賞「化学賞」2018年は誰の手に? 日本科学未来館が予想
例えば、次世代シーケンサーの登場によって、絶滅したマンモスや、ネアンデルタール人のDNA塩基配列が解読されました。解読されたネアンデルタール人と、私たちホモ・サピエンスのDNAを見比べたところ、実は現代人の身体の中にもネアンデルタール人の遺伝子が含まれていることが分かり、この事実は世界中を驚かせました。 また、個人に合わせたがん治療法の確立への貢献も期待されています。がんという病は複雑で、同じ肺がんであっても、その原因となる遺伝子は異なります。原因となる遺伝子が違えば、効く可能性のある抗がん剤の種類も変わってきます。次世代シーケンサーで、がんの原因となる遺伝子の状態を網羅的に調べることができれば、始めから投与する抗がん剤の種類を絞ることができます(日本では、まだこの治療法が認められている病院と認められていない病院があります)。 その他、私たちの腸の中にすむ細菌の種類や割合を調べたりする研究分野にも貢献しています。
従来のDNAシーケンサーでも、理論的にはネアンデルタール人のDNAや、がん患者のDNAの解読は可能です。ですが、解読するのに時間がかかりすぎて現実的ではありませんでした。しかし、次世代シーケンサーは読めるスピードが違います。例えば、ヒトゲノム30億塩基を解読するのに、初期のDNAシーケンサーならば約8年~17.8年、基本的に同じ方法での最速の機種でも8年かかっていたところを、次世代シーケンサー(機種名:454)ならたったの1か月で解読できます(現在の次世代シーケンサーはもっと速い解読が可能)。 このように、DNAを高速で解読することによってさまざまな分野で活躍している「次世代シーケンサー」の開発。その功績は、まさにノーベル賞受賞の基準となっている“人類への貢献”と言えるのではないでしょうか。 ◎予想=科学コミュニケーター・森脇沙帆(もりわき・さほ)