美味しそうなものには、多くのAGEが含まれている。老化に影響する「糖化」原因のAGEを防ぐ(専門家が監修)
糖質の摂りすぎは、ダイエットの観点から語られることが多い。しかし、もっと注意するべきは健康、そして老化への悪影響だ。糖質の摂りすぎによって起きる「糖化」と、その原因物質となる「AGE」の正しい知識を得よう。[取材協力・監修/牧田善二 撮影協力/UTUWA]
教えてくれた人
牧田善二さん(まきた・ぜんじ)/〈AGE牧田クリニック〉院長、糖尿病専門医。ロックフェラー大学医生化学講座などでAGE研究を約5年間続ける。北海道大学医学部、久留米大学医学部を経て現職。医学博士。
糖質から人体で生じる噂の悪玉AGEの正体は?
これまで触れてきた食後高血糖や血糖値の乱高下の背後では、ある困った反応が静かに進行している。それが「糖化」だ。 「糖化とは、過剰なブドウ糖などの糖質が、体温で熱せられて、タンパク質を作るアミノ酸のアミノ基にくっつく現象。そこで生じる悪玉物質をAGEといいます」(糖尿病専門医の牧田善二医師) AGEは「Advanced Glycation End Products」の頭文字を取ったもの。AGEsと複数形で呼ばれることもあるが、ここではAGEと言おう。日本語では「終末糖化産物」であり、その名の通り、AGEは糖化の終着駅である。 AGEは、体内で生じるお焦げのようなもの。実際、AGEがおよそ100年前に初めて発見されたのは、こんがりと焦げた食品からだった(左ページコラム参照)。 お焦げは美味しいけれど、後述するように、AGEは美と健康の大敵。糖質の過食で血糖値が高い状態が長く続けば続くほど、体内でAGEは増えてくる。 適正糖質や地中海食、ケトジェニックダイエットなどにより、血糖値が上がりにくい食事を心がけることは、カラダを危険なAGEから守るうえでも非常に重要なのである。
食品から始まったAGE研究の歴史を知る
AGEが最初に発見されたのは、カラダからではなかった。1912年、焦げた食品から見つかったのだ。 そのプロセスは、美食の国フランスの発見者ルイ=カミーユ・メラールの名前を英語読みして「メイラード反応」と呼ばれる。初めのうち、AGEは食品の旨みの元と好意的に評価されていたのだ。 人体から最初に発見されたAGEは、ヘモグロビンA1c(HbA1c)という物質から。58年に初めて分離されて、その生成メカニズムは75年になってようやく明らかになった。 HbA1cは健康診断で測られる値だから、誰もが一度は見聞きしたことがあるはず。赤血球中で酸素を運ぶヘモグロビンが糖化されたものであり、何%が糖化されるかで過去2か月の血糖値の平均値を示す。 そして90年代になり、この記事の監修者である牧田善二医師がアメリカのロックフェラー大学医生化学講座で研究中、血液や尿から微量のAGEを測る方法を発見。92年に世界的に著名な科学誌『サイエンス』に発表したことから、AGE研究が加速する運びとなる。 そして21世紀に入り、AGEと生活習慣病や老化などとの深い関わりが少しずつ解明されてきたのだ。