まちづくりに取り組む建築家が実践する、「自分の街は、自ら住みやすく変えていく」暮らし方 ニシイケバレイ/CaD 東京都豊島区・新宿区
現在、駐車場だった場所に新しい建物の建築が進められています。ニシイケバレイになってから新築の建物をつくるのは初めてですが、これまでつくられてきたエリアの特性を受け継いでいく考え方で、つながりを生むデザインが施されているとのこと。 また今後もその時々の状況に応じ、リノベーションは続けられていく予定だそう。 「ニシイケバレイでは、ほかの人が真似しやすいようなデザインを意識していました。わかりやすく小さなことの積み重ねでこれだけ場を豊かにすることができる、と示すことで、別の場所でだれかがそのアイディアを取り入れ、より良い街になっていくのではないかと思います。また深野さんが1人で所有している土地だからできたことでもありますが、複数の建物を所有していなくても、隣接する物件をもつ2人、3人が協力し合えば別の場所でも同じようなことが展開できる可能性はあります。ニシイケバレイでの取り組みがそうやって別の場所に広がっていくことに関わっていけたら嬉しいですね」
自ら住みやすい街に変えていくためのまちづくり
建築家として数々の住宅の設計を手掛けてきた須藤さんは、これまでも住宅以外の機能を併設した個人住宅をいくつも設計してきたそうです。 「人生は不確かなもので、この先どうなるかは誰にもわからないにも関わらず、住宅をもとうとするとある時点でのライフプランを反映したものになりがちです。その時に、住宅としてしか使いようがないものとして設計してしまうと、融通が効かなくなりリスクを孕むことになると思っているんです。少しの余白をもっておくと、選択肢が増え、生き方が変わったときにも備えておくことができるのではないかと思います」 当初からそのような要望を受けて設計する場合もあれば、打ち合わせを通して要望を具体化していく過程で、専用住宅とは異なる住宅を選ばれる方もいるのだそう。 「これまで、酒屋や飲食店を併設した住宅や、さまざまな用途で使用できる外部に開いたガラス張りのフリースペースを設けた住宅など、自ら事業を行ったり住み手以外に使ってもらえる場所を設けた住宅をいろいろと設計してきました。自営にしろテナントに貸し出すにしろ、住宅に収入を生み出す部分をつくることで、ローンの返済上も有利になり、希望する立地を購入できるといったメリットもあります。ただそれ以上に、本来であれば外部に依存しなければならない自分がほしい環境を、自ら手に入れる手段として有効なのではないかと考えています(店舗兼用住宅の住宅ローンの利用については銀行によって見解が分かれるので確認が必要です)」 そのような考えのもと、須藤さんはニシイケバレイからもほど近い目白に土地を購入し、自身が経営する設計事務所と飲食店「CaD(カド)」を併設した自邸を設計。2024年春にオープンしました。 もともとはテナントに貸し出す予定だった店舗スペースも、深野さんが自らChanoma(カフェ)を経営し、ニシイケバレイの住人や常連さんなど地域の人びととの関係を構築する様子を見たことも自身で経営することにした一因だったとのことです。自ら経営することで、「自分が家の近くにほしいと思う場所をつくることができる」と考えるようになったといいます。