初の“ファミリー・ポルシェ”登場 ポルシェ復活の物語と「マカン」の戦略
一昔前、エクセレント・カンパニーという言葉が流行った。マッキンゼーのコンサルタントが作った言葉だ。条件定義は8つあって、 (1)行動の重視 (2)顧客に密着する (3)自主性と企業家精神 (4)ひとを通じての生産性向上 (5)価値観に基づく実践 (6)基軸から離れない (7)単純な組織・小さな本社 (8)厳しさと緩やかさの両面を同時に持つ たぶんポルシェは、エクセレント・カンパニーである。しかし、定義の8項目を眺めると、何とも耳触りばかり良くリアリティの無い話になってしまう。マッキンゼーのコンサルタントみたいに頭の良くない筆者はもっと生臭くて、場合によっては血みどろくらいの企業ストーリーの方が得心がいく。今回はポルシェの新SUV「マカン」をテーマに、ポルシェのリアルな姿を検証してみたい。
エクセレント・カンパニーの理由
ポルシェのどこがエクセレントかと言われれば簡単だ。スポーツカーを作っているメーカー全てが、ポルシェのビジネスモデルを羨み、目標にしているのだ。8項目にもわたる難しい話は要らない。「あいつ上手いことやってるよなぁ。よし俺もああなろう」とみんなが思っている。それで十分だ。 「ああなろう」の「ああ」が何かと言えば「ちゃんとした内容の1000万円級のスポーツカーを数売り、しかも儲かる」ということだ。心意気だけで赤字を出しながらスポーツカーを作るのは嫌だし、かと言って大衆受けを狙って志の低いものを売るのも堪らない。作り手として胸張って「これはスポーツカーです」と言えるものを高い値段で沢山買ってもらう。それは悪くないに決まっている。だから皆が羨むのだ。 では、何でポルシェだけがそんなことができるのかと言えば、ポルシェは勝てる勝負しかしないからだ。しっかり準備し、他社を利用し、負けないための準備が整ってから戦争を仕掛ける。だから負けない。そしてポルシェをそういうことのできる会社に体質改善したひとりの人物がいた。まずはそのヒストリーを振り返ってみよう。