初の“ファミリー・ポルシェ”登場 ポルシェ復活の物語と「マカン」の戦略
マカンはカイエンを補完する
そうして迎えるマカンだ。普通に考えればこのマカンにもポルシェの大いなる野望が潜んでいるということになるだろう。出したいから出しました的な無邪気な話のわけがない。 ボクスターの時は、何が必要か、あるいはどんなモデルが売れるかではなく、今使える材料でできることをやった。手持ちの材料で911の下のレンジのクルマを出すという選択と集中でクルマを作った。 カイエンの時は、巨人フォルクスワーゲンの力を利用し、全くの新ジャンルへの参入リスクを大幅に回避した。成功すれば利益は丸取り、失敗してもコスト負担は最小だ。 パナメーラでは、911と同等以上の価格レンジで、高い運動性能を持つフル4シーターの競合車が少ないことに勝機を見出して成功を収めた。 ポルシェは今、カイエンのカバーしきれてないエリアを補完したい。SUVはセダンに比べ室内空間が広く、人も荷物も積める。一般に運転席からの見晴らしがよい。少し前のプレミアムSUVは、ボディサイズが大きく燃費は悪い傾向にあったが、サイズバリエーションの追加と新世代エンジンの登場で変わりつつある。 SUVとは少々捉えどころが無い車種だ。何となく解るが説明できないという人も多いと思う。しかし、もはや乗用車のウチで背丈の高めのものだという定義でいいだろう。かつては、乗用車の絶対中心にセダンがあり、トラック由来のSUVは傍流の変わり種に過ぎなかったが、今や乗用車マーケットの主役を奪いかねないところまで浸食しているのである。余談だが日本はミニバンによって一足以上早くそういう変化を終えて、もはやセダンは絶滅危惧種になっている。だから日本人は定義がよくわからなくてもミニバンと類似するSUVの持つメリットは欧州の人たちよりもよく解っているのだ。 カイエンはプレミアムSUVという立ち位置だから、競合するレンジローバーやBMW X-5の手前、大きく豪華でなくてはならない。しかし、北米ならともかく、アジア諸国のファミリーカー需要を満たすにはにカイエンは大きすぎ、そういうマーケットを取りこぼしている現実がある。ここにマカンを投入する。つまりポルシェにはすでに具体的な顧客の顔が見えていると言っても良い。