世界を席巻しつつあるYOASOBIと日本発「Gacha Pop」の可能性
Chartmetricランキングで見ると、2020年以降、米津玄師、YOASOBI、藤井風、Adoときて、23年になってようやく日本の「従来型」アーティストでもある(旧ジャニーズの)Snow ManやMrs. Green Appleがトップ1000位圏内に入ってきているのが分かる。 「マイナーデビュー」のアーティストたちのストリーミングの波及効果であることは明らかだ。同時に、コロナ禍のロックダウンでライブ活動ができない中で、日本の “メジャー・アーティスト” たちもストリーミングに注目するようになった結果でもある。
世界のトレンドに逆行
日本の音楽市場がいかに特殊かを見てみよう。世界でデジタル(ストリーミング、ダウンロード)売り上げがCD/DVDを超えたのが2015年、米国では11年、CD小売市場が早めに崩壊していた韓国に至っては03年。すでに全世界でも音楽市場の8割以上がストリーミングになっているにもかかわらず、日本はいまだにCDなどがデジタルの売り上げを上回っており、10年以上他国に “遅れている”、もしくは “完全に独自進化した市場” である(先進国では唯一無二)。 背景にあるのは、戦後の再販価格制度を適用してCD価格を高位安定させたこと、事務所がマーケティング戦略として、所属タレントのCD複数枚購入に熱心な中高年層市場を築いたことだ。こうした「唯一無二」の音楽生態系での勝ちパターンを踏襲しようとすると、どんどん世界のトレンドに逆行する。まさに「ガラパゴスの悲劇」だ。国外に出た途端に、アーティストの売り上げが10分の1になってしまうような孤立した市場環境の中で、海外にアクセスするモチベーションは生まれにくかった。 ガラパゴス的な日本音楽市場に見えた変化の兆しが、先述のSpotifyのGacha Popだ。日本発アーティストたちの新奇性が期待され、一定数のファンが獲得できるようになりつつある。この動きを大きく後押ししているのは、同時期に並行して起きていた動画配信によるアニメ市場ブームである。