マイナ保険証へ「一本化」は“医療の質の低下”と“税金の無駄遣い”を招く? 専門家が警鐘…“現場”で続発する「不都合な事態」とは
災害等の「非常時」に使い物にならない
国立情報学研究所の佐藤一郎教授は、コンピューターサイエンスの専門家の立場から、マイナンバーカードは非常時に使うことを想定して設計されておらず、災害等が発生した場合に健康保険証として使うことはそもそも無理があると指摘した。 佐藤教授(国立情報学研究所):「カードリーダーがあったとしても、サーバーに接続できない環境では使えない。 一番まずいと思うのは災害時だ。まず、災害時に電力が切れると、カードリーダーは動かせない。 カードの読み取りだけならスマートフォンでなんとかなるかもしれない。しかし、サーバーに接続できないと、保険者や保険番号がわからない。結局、通信が切断された状況では、マイナンバーカードは全く無力なプラスチック片になってしまう。 日本は、地震や台風といった自然災害が非常に多い。特に地震の場合には、停電だけではなく通信インフラの切断が起きる。 1月の能登半島地震でも通信インフラが切断され、マイナ保険証が医療機関で使えないという事態が多発した。今後、自然災害が起きたときには、同様の問題が起きることになる。 交通系ICカードの場合は残高の情報がサーバーとカードの両方に記録されていて、通信が切断されてもカード側の情報を使って電車に乗れるようになっている。しかし、マイナンバーカードは全てサーバーに接続しないといけない形になっているので、緊急時に非常に弱い。 我々のような技術屋からすると、マイナンバーカードは平常時に使う目的しか考えずに設計されたことが透けて見える」
被災者支援でデジタル庁が活用したのは「Suica」だった
では、能登半島地震の被災者支援において、マイナンバーカードはどの程度の役割を果たしたのか。 能登半島地震発生直後の1月4日、河野太郎デジタル担当相は、X(旧Twitter)で被災者にマイナンバーカードの活用を呼び掛けた。 また、河野大臣は、1月23日の記者会見でも、以下のように、マイナンバーカードを持ち歩くことを推奨する発言を行っている。 「マイナンバーカードはデジタル社会のパスポートとして、平時の便利だけでなく、有事の安心にもつながるものですので、マイナンバーカードをお持ちの方、タンスに入れておくのではなくて、現時点では是非、財布に入れて、避難する際に一緒に避難していただければと思っております」 しかし、実際には被災地では通信インフラも電力もなかなか復旧せず、マイナンバーカードを利用できる状態にはなかった。結局、1月下旬になってデジタル庁が「Suica」を被災者に配布することを決定し、活用されたことは、すでに報道されている通りである。