マイナ保険証へ「一本化」は“医療の質の低下”と“税金の無駄遣い”を招く? 専門家が警鐘…“現場”で続発する「不都合な事態」とは
診療段階で「患者にも医療機関にも有害でメリットなし」
診療段階においても、実際の医療現場で起きている混乱や、今後想定されるトラブルが指摘された。 埼玉県保険医協会理事長の山崎利彦医師は、医療の現場でマイナ保険証が使われていない理由として主に以下の3点を挙げた。 ・操作の手順が多くめんどう ・受診ごとに毎回、医療情報の提供への同意について確認を求められる ・トラブルが多い このうち、操作の手順が多いこと、資格確認と医療情報の提供への同意確認を毎回求められることについては既に述べた。 「トラブル」について確認してみよう。全国保険医団体連合会(保団連)が1月に発表した「2023年10月1日以降のマイナ保険証トラブル調査」によると、アンケートに回答した8672の医療機関のうち、マイナ保険証に関するトラブルがあったと回答したのは59.8%にあたる5188院だった。そのトラブルの内訳は、【図表2】のとおりである。 氏名や住所に「●」が表示されるトラブルのほか、車椅子で医療機関に来院した高齢者が、顔認証つきカードリーダーでの認証やパスワードの入力に困難をきたす事例も確認されている。 また、トラブルを受けてどのように対応したかについては、83%が「その日に持ち合わせていた健康保険証で資格確認をした」と回答した。 山崎医師:「恐ろしいことに、1年以上前からずっと、このマイナ保険証に関するトラブルの発生状況のデータが改善されていない。 我々医療機関にとっては、こういうトラブル続きの上に、2度手間、3度手間になるようなマイナ保険証を使うメリットは少ない。 国は、『デジタル化』『医療DX』の推進による医療情報の共有をうたっている。 しかし、すでに他の医療機関との間で医療情報をやりとりする方法として、すでに(患者の情報プライバシー権・自己情報コントロール権に配慮した形での)『紹介状(診療情報提供書)』のしくみがある。 薬剤情報の共有についても、『おくすり手帳』のほうが最新の情報を得られ便利だ(詳細は後述)」 保坂区長は、マイナ保険証のトラブルが解消されない現状について、企業が不良製品を市場で販売し流通させた場合の「リコール」の制度になぞらえて評した。 保坂区長(東京都世田谷区):「もし、一般企業で製品として出したらリコールしなければならないものだ。 不具合を徹底的に点検し、混乱のない状態にするのが常識だが、その常識が働いていない」