自宅での転倒、注意すべきは階段よりも「リビングや寝室」 理学療法士による、寝たきりを遠ざける転倒予防トレーニングを紹介
高齢者は転倒が原因で要介護生活になるリスクがあります。住み慣れた家でも危険なポイントはたくさん。自分でできる予防と対策を教えます(構成=島田ゆかり イラスト=鈴木亮) 【イラスト】体幹を鍛える筋トレ。まずは椅子に深く座り、腹筋を意識して… * * * * * * * ◆加齢によって衰える3つの力 「若い頃はつまずいたくらいでは転ばなかったのに……」と感じている読者も多いでしょう。若い頃と違って、何もないところで転倒してしまうのが高齢者の特徴。加えて、骨が脆くなり、ちょっとした転倒でも骨折することが少なくありません。 手をつけば手首、しりもちをつけば股関節が折れることも増えます。骨折によって寝たきりになれば、やがては認知症に進むことも。転倒予防は健康寿命をのばすためにも重要なのです。 高齢者が転倒する主な原因は筋力とバランス感覚、そして注意力の低下です。人間は立っているときや座っているときに、「抗重力筋」を働かせています。重力に対して姿勢を保持する腹筋や背筋、大殿筋(おしり)、大腿四頭筋(太もも)などの筋肉です。 しかし、加齢とともにこれらの抗重力筋が衰えるとバランスを崩し、転倒しやすくなるのです。歩くのが遅くなったり、脚が上がらないのは、すでに抗重力筋が衰えている可能性があります。
そして、複合的な動きに対応するのがバランス感覚。私たちは立ったり座ったり方向転換をしたり、いくつもの動きを組み合わせながら生活しています。加齢によりバランス感覚が衰えると、これらの動きに瞬時に対応できなくなるのです。 さらに、慣れ親しんだ家の中ではとくに注意力が低下しがち。間取りや家具の配置は変わらないのに何かにぶつかったりつまずいて転倒するのは、まさに注意力が衰えた証拠です。 逆に、階段や段差があるところは「危ない」と意識するので、実は転倒リスクはそれほど高くありません。 また、2つのことを同時にできなくなるのも注意力の問題。たとえばトイレに行こうと立ち上がったときに家族に呼ばれると、返事をすることに気を取られて足元がおぼつかなくなるのはその典型です。 このほか、血圧や貧血の薬を服用している人は、副作用でめまいやふらつきを起こすケースも。服用の際は転倒リスクがないか、かかりつけ医に確認しておきましょう。
【関連記事】
- 血圧を乱高下させない、冬の安全入浴法。熱めのお風呂、晩酌後の入浴、浴槽で読書…いずれも死に至るリスクが。入浴は18時まで、入る前にはコップ1杯の水を
- 家庭内事故で亡くなる人は、交通事故死の4倍以上。ヒートショックによる溺水、薬の包装シート誤飲で窒息…冬はリスクが高くなるので要注意
- 家庭内事故死、約9割が65歳以上。専門家が教える、身を守る8ヵ条。「自分の家だから大丈夫」と過信せず、まずは「床に物を置かない」ことから始めて
- 高齢者の事故は自宅で発生しがち。トイレのマットで転ぶ、コンセントのほこりで出火、階段を踏み外す…わが家に潜む危険をチェック
- 専門医が教える「のど筋トレ」。入浴中にウトウト、食事中にムセるは危険!風呂カラオケで食い止める