ホントに四角いうんちをする唯一の動物、超硬いお尻で身を守るオーストラリアの人気者
繁殖
ヒメウォンバットの下半身は、交尾の儀式でも重要な役割を果たす。繁殖期のメスはオスのお尻をかじって逃げ、オスが熱心に追い掛ける。このキャッチ・アンド・リリースの求愛はかなり激しくなることがある。 妊娠期間は約30日と短く、ジェリービーンズほどの未熟な子どもが生まれる。子どもは母親の袋に自分から入り込み、約半年間、乳を飲みながら成長する。この袋から抗菌性の物質が放出され、子どもを感染から守っている。 子どもは袋を出て暮らすようになっても、乳を飲んだり、危険を避けたりするため、たびたび袋に戻る。生後7カ月ほどで自分の世話ができるようになり、生後15カ月ごろに親離れし、生後2年で性成熟する。
立方体のふん
ヒメウォンバットは夜行性の草食動物で、毎晩8時間、草や木の根、樹皮などを食べて過ごす。水分と栄養分を可能な限り多く保つため、消化には8日から14日かかる。そして、驚くほど乾燥した四角いふんをする。 その数は一日最大100個ほど。科学者たちは長年、丸い直腸から排出されるふんがどのように、なぜ四角くなるのかについて疑問を抱いてきたが、2018年に驚くほど長く不規則な腸と関係している可能性が高いと判明した。 ほとんどの動物は腸がほぼ均一で、丸いかソーセージのようなふんになる。食物を消化する際、腸壁は収縮と弛緩(しかん)を繰り返し、栄養を吸収しながら、食物のかすを押し進める。ふんの形成を助けるのが腸の圧力だ。 ヒメウォンバットは2種類の腸壁を持ち、硬い部分とより伸縮性のある溝が交互に配置されている。2種類の腸壁が連携し、乾燥したふんを独特の立方体に形づくっているのだ。立方体のふんをする理由は証明されていないが、ヒメウォンバットが縄張りをマーキングする際、立方体の方が転がりにくいためではないかと推測されている。
脅威
国際自然保護連合(IUCN)はヒメウォンバットを低危険種に分類している。ケバナウォンバット属のミナミケバナウォンバット(Lasiorhinus latifrons)は近危急種で、キタケバナウォンバット(Lasiorhinus krefftii)は近絶滅種だ。 個体数は安定しているものの、しばしば巣穴による農地の被害を防ぐために駆除される。毛皮や趣味の狩猟のために殺されることもある。さらに、生息地の喪失、ディンゴの群れや野犬、干ばつ、山火事、車との衝突などの脅威にも直面している。孤児になったヒメウォンバットは、多くの場合、リハビリを行えば、野生に戻すことができる。
ナショナル ジオグラフィック 日本版編集部