過去最高のインバウンドと世界最高峰の食材、なのに地方は置いてけぼり
■ ハーレーで熊野古道をツーリング だから私が大都市の観光関係者に言っているのは、「何もしなくてもインバウンドが来る東京や京都は、彼らに日本が好きになってもらうようにしてください」ということ。 東京や京都が楽しければ、また日本に来ようと思うだろう。 そうすれば、次回は金沢や伊勢神宮に行こうと思うかもしれないし、4回、5回と来れば、もっと小さいかもしれないけれど、そこに行かなくては味わえないような地方に行こうと思うだろう。 ヨーロッパと頻繁に仕事をしている私の友人が先日こんなことを言っていた。 もう日本に10回以上来ている親日派の富裕層から旅行会社に、「紀伊半島の熊野古道をバイクで旅したい。しかもバイクはハーレーダビッドソンの型番指定で4台用意してほしい」との依頼が来たそうだ。 そんなバイクはレンタルで用意するわけにはいかないので、旅行会社はそのモデルを購入してスタート地に4台用意したそうだ。 彼らはそのバイクでツーリングを楽しみ、多いに喜んで帰って行ったという。 一方、旅行会社はそのバイクをリセールしたそうだが、それとツアー料金を考えると、十分な収益を得たという。 つまり日本を何度も訪れるようになれば、彼らは地方に魅力を感じ、いろいろな場所を訪れるようになる。 先の調査でも「地方の観光地を2015年以降に旅行したことがある」と回答した人は、初訪日者では全体の72%だが、リピーターは90%。つまり、親日派ほど地方を訪れているのである。 だから地方をガストロノミーツーリズムで豊かにしようというのは、正しい考え方ではあるのだが、問題はどうやったらいいかである。
■ 地方が陥りがちな罠 ガストロノミーツーリズムの一番やっかいな問題は、その場所に行かないと楽しみを味わえないこと。 例えば、松阪牛を東京で味わうことはできるが、松阪市で味わう楽しさとは違う。だが、そこに行くには時間もお金もかかる。 だから、それだけのリスクをおかしてもいくべき価値がある場所になくてはならないのである。 「この地方で客を呼べる食文化はありますか」と聞くと、「うちのコメはうまい」「魚がうまい」「野菜が美味しい」などといった返事が返ってくることが多い。 間違っていないとは思うが、コメや魚や野菜がうまい地域は、日本中にいくらでもある。そこの米を食べるだけにその場所に行くだけの魅力にはならないのである。 つまり、唯一無二の価値を作る、もしくは発見しないと、人はわざわざ地方まで行かない。それをどう作るかが難しいのだ。 そんな時、私はよく相反する2つのことを考える。それは、 ●その地方を徹底的に掘って、ここにしかないものを見つける、もしくは育てる。 ●いったん、その地方から離れて物事を俯瞰的に見てみる。 この地域にしかない絶対的な勝ち筋がないのか。それを徹底的に探しながら、それがほかの地域と比較して本当に勝てるものなのかを冷静に判断することが必要なのである。