【在職老齢年金の改正】いくらまで稼げば年金「満額受給」となるか?知っておくべき“カット基準” 「50万円の壁」引き上げで変化する“損得の境目”
2025年の年金改正に向けて、見直しの全容が見え始めている。60歳以上で働きながら年金を受け取る人にとって、注目すべきは「在職老齢年金」制度の見直しだ。
現行の制度では、「給料+年金(厚生年金の報酬比例部分)」の金額が50万円を超えると、超過分の半分の年金が減額(支給停止)される。シニア世代の就業率が年々上昇しているなか、この在職老齢年金制度の見直しに集まる注目度は高い。 厚労省が社会保障審議会年金部会に提出した資料によると、現行の50万円から62万円または71万円に引き上げる案、さらに完全廃止してどれだけ稼いでも年金カットされない案の3つが提案されている。 「年金博士」こと社会保険労務士の北村庄吾氏は、年金で得するチャンスだと指摘する。 「在職老齢年金制度はシニアの稼ぐ意欲を失わせるひどい仕組みですが、今回はいい方向への変更になる。多くの人が65歳以降も年金支給停止を気にせずに稼げるようになり、給料と年金のトータルの収入も増えるわけです」
「支給停止」が始まる給料のカット基準はどう変わるか
この見直しが実現したと仮定して、あなたが「年金支給停止」されずに働きたい場合、いくらまで稼げるようになるのか。 現在、60代前半男性の一般労働者の平均賃金は33.4万円、60代後半男性は29.3万円(2023年厚労省「賃金構造基本統計調査」)。年金減額を避けるために働き控えをしなくてよくなれば、平均額はもっと上昇するはずだ。 早見表では年金改正で「50万円の壁」が「62万円の壁」に引き上げられた場合の変化を整理した。年金額(厚生年金の報酬比例部分)ごとに給料(ボーナス含む標準報酬月額)に応じた年金カット額の変化を示すとともに、「支給停止」が始まる給料のカット基準がどう変わるかをまとめたものだ。 現行制度では年金8万円の人は月給42.5万円以上(標準報酬月額44万円)になると年金の支給停止が始まり、月給45万円なら年金が1万円カット、月給50万円なら4万円カット、といった具合に年金の減額幅が増していく。それが、改正後は月給54.5万円以上にならない限り年金減額を心配せずに働けるようになる。年金15万円の人なら35万円未満に収めなければならなかったところ、改正後は月給48.5万円未満なら年金満額受給となる。 それだけでなく、「月給+年金」が壁を超えて働く場合にも、年金カットが少なくなるのは見ての通りだ。