意外と知られていないものも…精神疾患・発達障害がある人への「医療費助成」、実はこんなに!
安くできるものなら医療費は可能な限り抑えたい……誰しもそう考えるものだが、医療を利用する機会の多い精神疾患・発達障害の当事者は、なおさらそう強く思っているはずだ。この記事では青木聖久教授(日本福祉大学教授)が、負担を軽減してくれる「医療費助成」のうち主なものを、新刊『発達障害・精神疾患がある子とその家族が もらえるお金・減らせる支出』より紹介する。 画像】「しすぎたらバカになるぞ…」母の再婚相手から性的虐待「すべてが壊れた日」 前編〈強迫神経症で動けなくなることもあるのに…精神疾患の男性が「退院」を希望し続けた「もっともな理由」〉より続く。
そもそも日本の公的医療保険はどんな仕組みか
日本の公的医療保険は1922年に誕生しましたが、保険の適用から外れる人が多かったため1958年に国民健康保険法が全面改正され、さらに制度の整備も行われて、1961年からいわゆる「国民皆保険制度」が始まりました。これによって国民全員が何らかの医療保険に加入することとなり、現在に至ります。 医療保険の仕組みを大雑把に説明すると、加入している人(被保険者)は、所得に応じて毎月、保険料を納めます。そして医療を受けたとき、被保険者は医療費の1~3割を窓口で支払い、残りの医療費は医療保険から支払われるという具合になっています。 これによって被保険者が負担する医療費、すなわち自己負担はかなり安く抑えられますが、病気が長びいたり、大病を患ったりすると、自己負担が侮れない額になることもあります。本章で紹介する医療費助成とは、その自己負担の金額を軽減する制度のことです。
自立支援医療のなかの「精神通院医療」 とは何か
まずは国の制度である「自立支援医療」から紹介します。 自立支援医療は、障害のある人を対象に国が行っている医療費助成で、下の3つにわかれています。 ・身体障害がある人への「育成医療」(18歳未満) ・身体障害がある人への「更生医療」(18歳以上) ・精神疾患・発達障害がある人への「精神通院医療」 このうち「精神通院医療」は精神障害者保健福祉手帳がなくても申請でき、(所得により異なりますが)自己負担が1割かそれ以下まで軽減されます。 ひと月あたりの「負担上限額」も設定されており、上限に達した月はそれ以上の自己負担は発生しません。 外来での診察・投薬や、デイケア、訪問看護などの利用料が対象となりますが、利用できる医療機関は限られており、入院治療は対象外などの制約があります。 精神通院医療を申請するときは、申請書、診断書、保険証などを用意して役所で申請し、認められると「自立支援医療受給者証」と「自己負担上限管理表」が交付されるので、それらを医療機関で提示して使います。有効期間は1年以内で、その後も制度を利用する場合は更新が必要です。 自立支援医療が適用されるのは、都道府県または政令指定都市が指定した「指定自立支援医療機関」に限られます(利用する側が好きな医療機関を選べるわけではありません)。指定医療機関は交付される自立支援医療受給者証に載っており、原則として病院・診療所、薬局などがそれぞれ1つずつ記載されます。 また、精神通院医療については、精神疾患・発達障害と関係のない疾患(たとえば風邪など)の医療費は対象になりませんし、公的医療保険の対象とならない治療(病院以外で行われるカウンセリングなど)の費用は軽減されません。